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売れ続ける「ドラクエIX」の作り方 堀井雄二氏らが語る、開発の思想とこれから(2/2 ページ)

» 2009年09月03日 16時43分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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地方の人にもすれ違い通信を 「超連動」

画像 ドラゴンクエスト モンスターバトルロードII

 ドラクエIXユーザーが少ない地方に住む人は、すれ違い通信する相手や、マルチプレイの相手がいない人もいる。解決策として、ドラクエIX開発と同時に企画を進めていたのが、9月11日にスタートする、業務用カードゲーム機「ドラゴンクエスト モンスターバトルロードII」との連動機能「超連動」だ。

 全国の量販店などに設置されたモンスターバトルロードIIの筐体(きょうたい)とすれ違い通信すると、「大魔王」の地図が手に入るというもの(ドラクエIXがカードゲーム機と連動 すれ違い通信で歴代魔王をゲット)。「バトルロードを発信基地に人を集め、そこを中心に広がっていくという狙いを持って仕込んである。地方のドラクエIXユーザーが、ふれ合うきっかけになれば」(市村さん)

 ドラクエIXは、携帯サイトとの連動機能もあり、プレイ履歴などを全国の人と共有できる。「人気の職業や、どのモンスターが一番殺されたかなどを集計した調査をしようと思っている」(市村さん)。全国のユーザーのドラクエIXとの関わり方を調べたいという。

女性に遊んでもらえるドラクエに

画像 キャラクターの着替えも

 従来のドラクエシリーズのユーザは男性だったが、IXは女性ユーザーも多いという。キャラクターを着替えさせられたり、フィールドの光っているところにアイテムを落として“キラキラ好き”な女性にアピール。「女性ユーザーは、週を追うごとにどんどん増えている」(市村さん)という。

 女性だけではない。さまざまなユーザー層や遊び方を想定し、「いろんなところに突き刺さるかもしれない要素を、ふんだんに入れまくった」(市村さん)ため、「称号」の獲得や宝の地図攻略やすれ違い通信、練金など、「人によってはまってる部分が違う」(堀井さん)。

 さまざまな要素を入れ込みながらも、「全部のシステムが循環している」(藤澤さん)ゲームを目指したという。「練金をやってみると、素材が1個足りないからと、宝の地図を開いて素材を探して、地図を攻略するとレベルが上がって……と、相互にうまく作用して、結果的にやめづらくなれば」(藤澤さん)

画像 講演中、堀井さん、市村さん、藤澤さんがすれ違い通信をオンにし、来場者と通信していた。ちなみに堀井さんのキャラクターの名前は「ジョルジュ」

 100時間、200時間遊んでいるユーザーも珍しくない。ながらプレイができる携帯ゲーム機で、比較的“緩い”ゲームだったことが、長時間プレイを可能にしたと堀井さんは話す。「いま、テレビの前に100時間もいられないもん」。

 ハードにDSを採用したのは、「なるべく普及しているハードで出すことで、ハード的にもユーザーに負担をかけないようにする」という狙いもあったが、「結果的に、ユーザーの生活時間にも負担をかけないようにできた」(藤澤さん)

開発は外部企業と連携

 IXは、開発体制もこれまでと違ったという。開発元はレベルファイブ。シナリオはスクウェア・エニックスが、音楽やアニメはそれぞれの専門会社が開発した。「各社は物理的にも遠いところにあるので、連絡を不備なくやっていくのが非常にたいへんだった」(市村さん)

画像 藤澤さん

 スタッフは、シナリオのボリュームに悩んだ。「やっぱりこれしか入らないか……と。あっという間に終わってしまいそうで」(堀井さん)。限られた容量を、シナリオとほかの要素、どれに配分するかで「最後まで悩み続けた」(藤澤さん)。ふたを開けてみると、すでに400時間や600時間プレイした人もおり、結果的には「結構なボリュームになった」(堀井さん)

 堀井さんの手を離し、スタッフに任せた部分も多かったという。「これまでのドラクエは、自分で作ったものなので、完成しても自分では遊べなかった。IXは自分で作ってない部分が多いから、自分でも遊べる。何となくワクワクする感じや気持ちいい機能が入ってる。みんな苦労してよく作ってくれた」(堀井さん)

長く遊ぶドラクエを、従来のファンに理解してもらうことが難しかった

 これまでのドラクエシリーズは、発売1カ月で総売上の9割が売れていたが、IXは「1年間、それ以上にわたって継続していくゲームに変える」ことを目指した。

 発売からまだ2カ月。「取り組みが本当にうまくいったか答えは出ていない」が、中古市場に出回っている数は少なく、販売本数低下率も低いなど、手応えを感じている。

 ユーザーの成長も感じている。「システム的にはすごく難しいことさせてると思うのに、みんな、普通にプレイしている。ユーザーには女の子や子どもたちも多い。すごいな、けっこうレベルが上がってきてるな、と思う」(堀井さん)

 ただ、1年間かけて遊ぶという新しいプレイスタイルは「従来作のファンにはなじみにくく、理解してもらうことが非常に難しかった」(藤澤さん)と振り返る。「今後の課題と受け止め、ファンのみなさんと新しいドラクエを一緒に作っていきたい」

 ドラクエIXは「挑戦作」(市村さん)だった。「非常に難しいと思えたコンセプトだったが、あきらめずに取り組んで解決し、100時間、200時間遊べるドラクエが作れた。ドラクエの将来に、新たな可能性が開けた」と市村さんは自負している。

 ただ、ユーザーのゲームデータを見ていると、仕込んだネタを消化していくスピードが想定以上に早いという。「このペースだと1年遊び続けてもらうのはつらいかもしれない」(市村さん)。「もっとゆっくり遊んで」(堀井さん)。

 次回作「X」は、Wiiで発売する予定だ。「携帯機から据え置き機に戻せるのかという疑問もあるが、僕は、波があると思う。今は携帯機がラクだから携帯機だらけだが、そうなると、据え置き機は新鮮、キレイと思うだろう」(堀井さん)

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