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Windows 7のリリースがもたらす「XP時代の終わり」

» 2009年10月21日 07時30分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 XPのために、弔いの鐘が鳴る。

 MicrosoftのWindows XPは企業のPCの80%で使われている(調査会社Forrester調べ)が、次第に老いゆく同OSの時代はついに終わりを迎えようとしている。だがWindows 7が10月22日に発売されたあとでも、XPの終わりはすぐにはやってこないだろう。

 「企業におけるWindows XP時代」の終わりをもたらす要因として、Forresterのベンジャミン・グレイ氏は、古くなったITインフラの入れ替え、Windows XPサポートの終了、XPが入手しにくくなること、アップグレードするメリットがありそうなWindows 7の機能、アプリケーションの互換性問題を解決するXPモードを挙げている。

 「不況になったとき、IT管理者がITコスト削減のためにまずやることの1つが、手持ちのデスクトップPCの使用期間を4年から5年に延ばし、ノートPCの使用期間を3年から4年に延ばすことだ」とグレイ氏。「システムの買い換えをもっと延ばしている企業は多い。PCのアップグレードをWindows 7の導入と合わせて行おうと考えているからだ」

 Windows 7が発売されたら、IT部門はWindows XPを導入しにくくなる。Windows 7 Service Pack(SP)1のリリースから18カ月以内、あるいはリリース時に、「すべてのPCのOEMライセンスにWindows XPへのダウングレード権が付かなくなる」からだ。つまり、大企業やSMB(中堅・中小企業)でXPを導入するには、未使用のXPボリュームライセンスに後退するか、新規PCと一緒にXPをボリュームライセンスで購入する必要があるということだ。調達プロセスに余計な手間が加わることになり、IT管理者は消極的になるかもしれない。

 Windows XPのサポートが終了することも、同OSを使い続けたいIT部門にとって問題を複雑にする。XP SP2およびSP3の延長サポートは2014年4月に終了する。それ以降は、アップデートもパッチも提供されない。

 調査会社Gartnerは10月13日のプレゼンテーションで、Forresterと同様の結論を出している。Gartnerはさらに、独立系ソフトベンダー(ISV)が2011年末ごろからXPサポートを終了すると示唆し、2012年から「XPが危険ゾーンに突入する」としている。

 Gartnerのアナリスト、スティーブン・クレインハンス氏とマイケル・シルバー氏は、IT部門はUAC(ユーザーアカウント制御)、BitLocker、BitLocker To Go、AppLocker、Direct Access、新しいユーザーインタフェースなどのWindows 7のアプリケーションや機能にメリットを見出すかもしれないとプレゼンテーションで示唆した。

 Forresterの報告書は、これらの機能の多くは大企業にとって便利かもしれないとし、IT管理者は以下の機能の導入に備える必要があると付け加えた。

 「IT管理者が備えるべきWindows 7の機能トップ5は、Direct Access(モバイルユーザーの接続を簡略化)、BranchCache(ブランチオフィスのネットワークアクセスを向上)、BitLockerとBitLocker To Go(HDDおよびUSBドライブのデータを保護)、AppLocker(ユーザーアプリケーションのより細かな制御)、横断検索(ローカルとリモートのリソースにまたがるデータアクセスを簡略化)だ」

 グレイ氏によれば、Windows 7採用の最後の障壁となっていたのがアプリケーションの互換性問題だったが、仮想的なXP互換環境でアプリケーションを実行できるXPモードがこの問題を解決したと同氏は感じている。

 北米と欧州の企業のPC購入決定者653人を対象としたForresterの調査では、10社中6社がWindows 7への直接アップグレードを計画していることが示された。現在XPを採用している企業には容易なアップグレードパスがないのにもかかわらずだ。Windows Vistaを使っている企業の32%は次のステップを決めておらず、2%はWindows以外のプラットフォームへの移行を計画していた。

 調査に参加したPC購入決定者は以下のように回答した。

  • 7%は「12カ月以内にWindows 7を導入する具体的な計画があるか、既に導入を始めている」
  • 10%は「Windows 7を導入する具体的な計画があるが、12カ月以内には開始しない」
  • 49%は「Windows 7に移行するつもりだが具体的な計画はまだない」
  • 27%はまだWindows 7を検討しておらず、「よく分からない」
  • 1%は「Windows 7を飛ばして次のリリースを待つ」予定
  • 1%は「Windowsから別のプラットフォームに移行する」計画
  • 5%は「分からない」

 Forresterは、まだWindows 2000を使っている企業に対して、延長サポートが終了する2010年7月13日までに移行を完了するよう勧めている。Windows XPを使っている企業には、Windows 7のリリースから12〜18カ月以内に同OSの導入を始めるよう勧めている。Vistaを導入しているIT部門は、「Windows 7 RTM版でWindows 7の評価を始めることを検討するべき」だとグレイ氏は述べている。「Windows 7 SP1を搭載した新規PCの購入で、Windows 7へのアップグレードを計画するべきだ」

 ForresterとGartnerのデータは、ほかの調査と一致しているように見える。調査はいずれも、大企業もSMBも、ITインフラを刷新するよう勧めている。インフラ刷新は広範に行われるだろうが、景気後退の影響でスピードはやや落ちるだろう。

 10月12日の報告書で、Jefferies & Co.のアナリスト、キャサリン・エグバート氏は、「Win7に触発されたアップグレードサイクルは2010年後半に始まり、2013年初めまで続く可能性がある」とし、新しいハードの購入が、ソフトのアップグレードよりも6カ月ほど先行するとみている。これはDeutsche Bankなどの以前の調査の結果と同様だ。先の調査では企業、特に仮想化や64ビットコンピューティングに関心を持つ企業が、Windows 7とともにインフラをアップグレードしようと考えていることが示されている。

 IT資産管理会社Softchoiceの調査では、企業のPCの88%がWindows 7の最小ハードウェア要件を満たしていることが示された。Vistaのリリース時には、ハード要件の高さが問題になっていた。

 とは言え、Windows 7の採用を妨げる、あるいは一部の企業にWindows中心のITシステム刷新を思いとどまらせる可能性のある要因も幾つかある。評判の悪かったVistaで痛い思いをした企業が「様子見」の姿勢を取ったり、企業向けマーケティングキャンペーンが失敗したり、アップグレードや採用の問題が長引く、といった要因が考えられる。

 このような事態が起きるのを防ぎ、Windows 7をできるだけ早急に企業に普及させるために、Microsoftは特に同OSに関して積極的なプロモーションを展開してきた。例えば値引きに加えて、Windows 7 Enterpriseエディションの90日間無料トライアルをIT管理者に提供している。

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