米調査会社Gartnerが10月13日に行ったプレゼンテーションによると、MicrosoftのWindows 7は「アーキテクチャ的にはメジャーなアップグレードではなく、どちらかと言えば、Windows Vistaでのアーキテクチャ上の変更に磨きをかけたもの」だという。とはいえ、従来版のWindowsにはそれぞれサポート期限があるため、Microsoftプラットフォームを利用している企業はいずれはこの最新版Windowsにアップグレードせざるを得ないだろう。
「一般的には、企業のアプリケーションは半数以上がWindowsに依存している。それをリプレースするという選択肢は企業には与えられてない」とGartnerのアナリストであるスティーブン・クレインハンス氏とマイケル・シルバーはプレゼンテーションで指摘した。そして実際、Windows 7では各種のアプリケーションや機能が提供されるため、アップグレードの価値は十分にあるという。Windows 7では、例えば、UAC(ユーザーアカウント制御)のほか、BitLocker、BitLocker To Go、AppLocker、Direct Accessなどが改良されているほか、ユーザーインタフェースもアップデートされている。
また両アナリストは、Windows 7への切り替えをけん引するであろう要因として、今後、独立系ソフトベンダー(ISV)によるWindows XPのサポートの終了が進む点を挙げている。ISVによるWindows XPサポートの打ち切りは2011年末ごろから始まり、MicrosoftによるWindows XPの延長サポートが終了する2014年4月まで残り1年半を切った2012年末には、Windows XPは本格的な「危険ゾーン」に突入することになるという。現状では、大企業や中堅・中小の大半は依然としてWindows XPを利用している。
MicrosoftによるWindows XPのセキュリティサポート期限は2014年4月であるため、GartnerはWindows XPインフラからの移行を2012年末までに済ませるよう奨励している。また、まだWindows 2000を使っている企業は、セキュリティサポートが終了する2010年7月までに同OSの使用を打ち切るべきという。さらにVistaについては、既に新規PCへのVistaの導入を進めているのなら、当面はその方針を継続し、2011年にWindows 7に切り替えるよう奨励している。
Gartnerのプレゼンテーションではさらに、Windows 7の64ビット版にアップグレードすべきかどうかの問題も論じられた。64ビット版のメリットとしては、アドレス空間と物理メモリの増加、ドライバおよびアプリケーションとの強力な互換性、仮想化のサポート、セキュリティの向上などが挙げられる。ただしGartnerによると、64ビットへのアップグレードは「特に大きなプラスの変化をもたらすもの」ではなく、旧来のデバイスとの間で問題が起きる可能性があるほか、VPNなど一部のユーティリティは動作が遅くなるという。
またGartnerは、Linuxを採用している企業に対しては、「投資回収率(ROI)を検討して判断」するよう奨励している。
一方、一部のアナリストは、Windows 7のリリースによって企業で大規模なITハードウェアの買い替えが進む可能性を指摘している。
Jefferies & Coのアナリスト、キャサリン・エグバート氏は10月12日のリポートにおいて、「Windows 7をきっかけとするアップグレードサイクルが2010年遅くにスタートし、2013年初めまで続く可能性がある。新規ハードウェアの購入はソフトウェアアップグレードよりも6カ月ほど先行するだろう」と述べている。
これは既に独Deutsche Bankが指摘した見通しとも一致している。Deutsche Bankは以前に、10月22日のWindows 7のリリースを受けて、企業はITインフラの大規模なアップグレードを進めることになり、とりわけ仮想化と64ビットコンピューティングの取り組みを計画している企業でそうした動きが顕著になるだろうとの見通しを示している。
ただし一方では、大半の企業はおそらく景気低迷によるIT予算削減への懸念から、2010年末以降までWindows 7へのアップグレードには踏み切らないだろうとの見通しを示しているリポートもある。そのほか幾つかの背景要因により、企業のWindows 7導入がすぐには進まない可能性も少なからず指摘されている。
そうしたシナリオを回避すべく、Microsoftは積極的な値下げや販促キャンペーンを展開中だ。例えば、IT管理者など企業のITプロフェッショナル向けにWindows 7 Enterpriseの90日間の無料評価版を提供するといった取り組みもその1つ。前四半期決算で売上減に直面したMicrosoftは、Windows 7を収益改善につなげ、業績低迷傾向からの脱却を図りたい考えだ。
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