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「Twitterを理解していなかった」――UCC、キャンペーン“炎上”を説明 勉強会で経験共有へ(1/2 ページ)

» 2010年02月09日 17時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「Twitterの特性を理解せずキャンペーンを行ってしまった。申し訳ない」――UCC上島珈琲は2月9日、同社のTwitterキャンペーンがユーザーから批判を受け2時間弱で中止した問題について、ITmediaなどネットメディア向けに説明の場を設け、改めて謝罪した。

 ソーシャルメディアを活用したマーケティング活動に同社が取り組むのはこれが初めて。マスマーケティングと同じ考え方に基づいた一方的な情報配信が失敗につながったとし、「ユーザーに混乱をきたしたと反省している」と、同社グループEC推進室の坂本晃一室長は話す。

 Twitterは企業とユーザーが直接対話できる貴重な窓口と感じており、失敗を糧に今後も活用していきたいという。Twitterマーケティングの勉強会を開いてその内容を公開するなど、失敗からの教訓を広く共有。企業のTwitter利用を後押ししながら、自らもTwitterに再チャレンジする考えだ。

11個のアカウントで約30のキーワードを拾うBOT作成

 問題になったTwitterキャンペーンは、コーヒーにちなんだエッセイや画像などの作品を募集する「コーヒーストーリー大賞」「コーヒーアート大賞」の一貫で、2月5日に行ったもの。同社のマーケティングが企画し、昨年12月5日に作品の募集をスタートした(締め切りは今年3月1日)。

画像 「コーヒーストーリー大賞」「コーヒーアート大賞」の告知ページ

 ストーリー大賞は今回で11回目。これまで雑誌や新聞などマスメディアのみで告知しており、今回も募集当初はマスメディアだけを使っていたが、1月になって急きょ、Twitterの活用を決めたという。「Twitterならこれまでと違うユーザー層にリーチでき、企画を盛り上げられると考えた」ためだ。

 TwitterによるPR方法について、社外からもアイデアをもらいながら詰めた結果、ユーザーが投稿したキーワードに反応し、自動でメッセージを返信するBOTアカウントを作ることに決めたという。

 人力更新ではなくBOTを使ったのは、同社がこれまで行ってきた、プッシュ型のマスマーケティング手法をそのまま応用したため。グリコ乳業の「ドロリッチ」を飲んでいることを示す「ドロリッチなう」に反応するBOT「@dororich」(ユーザー個人が作ったもので、グリコ公式ではない)が盛り上がったことも参考にした。

 作成したBOTアカウントは11個。「コーヒー」「懸賞」「UCC」「小説」など約30のキーワードを各アカウントに振り分け、それぞれのキーワードに反応してメッセージを返信する仕組みだ。プログラムの構築は外部の企業に任せたが、「キャンペーンはあくまで広告主であるUCCの責任」と坂本室長は繰り返す。

「キャンペーンが批判されている」――スタート2時間で急きょ終了

 キャンペーンをスタートしたのは5日午前10時。ユーザーがつぶやいたキーワードに反応し、「コーヒーにまつわるエッセイとアートを募集中!エッセイで賞金200万円!アートで賞金100万円!締切間近!!」というメッセージを自動で送信した。最初の30分は1アカウントのみでスタート。徐々にアクティブアカウントを増やし、最終的には全11のアカウントから自動でメッセージを送った。

 だが送られてきたメッセージは、受け取ったユーザーにはスパムに映った。フォローしていないアカウントからプロモーション的なメッセージが送られてくる上、同様のアカウントが複数稼働していたため、「UCCを偽装したアカウントによるスパムBOTではないか」と不審がるつぶやきが多数投稿され、ユーザーの間で騒ぎになったのだ。

 「UCCのTwitterキャンペーンがネット上で批判されている」――11時半ごろ、UCCグループのネット関連事業を統括するグループEC推進室が気づき、キャンペーンを主導しているマーケティング本部に連絡。11時40分には吉本康徳CIO(最高情報責任者)に報告し、11時50分までに全アカウント停止した。Twitter運営側がスパムと認定して3アカウントをすでに停止しており、UCCが手動で停止したのは8アカウント。停止までに全アカウントが送ったツイートは536件という。

画像 公開された謝罪文(HTML版)

 事実関係をまとめ、同日午後1時ごろ、上島豪太社長に相談したところ、上島社長が「すべての情報を正直に出して謝罪する」と決めたという。午後3時20分に謝罪文をPDFで公開。その直後、「謝罪文のHTML版はないの?」というユーザーからのツイートを見て、HTML版も作成・公開した。

 キャンペーン開始から2時間弱でアカウント削除などを実施し、その後数時間で謝罪文を掲載する対応ぶりに、ネットでは「早い」と驚く声も上がっていた。「現場の問題を即座に経営陣に連絡するリスク管理体制が普段から整備されていたため、素早い対応ができた」という。

「温かいリプライに泣いた」――「上島珈琲店なう」でユーザーに対応を報告

 騒動は謝罪文の掲載でいったん収束したが、6日夜以降、キャンペーンを請け負った代理店はどこかという話題がネットで盛り上がり、まったく関わりのない代理店の名が挙がった。「すべては広告主UCCの責任なのに、特定の代理店が祭り上げられていた。非常な葛藤があった」と坂本室長は振り返り、今回のキャンペーンに大手代理店は一切関わっていないと話す。

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