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「クラウドの上に星雲を」 角川が電子書籍プラットフォーム、Twitter連携も

» 2010年10月26日 19時12分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 角川グループホールディングスと角川コンテンツゲートは10月26日、電子書籍プラットフォーム「Book☆Walker」を発表した。12月から、電子書籍を購入・閲覧できるiPhone/iPad向けアプリを試験的に提供。来年4月から順次、Android端末をはじめとしたスマートフォンやPCなどに対応し、7月に正式オープンする予定だ。

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 角川書店、アスキー・メディアワークスなどグループ10社のコンテンツに加え、他社のコンテンツも受け入れて販売する計画。電子書籍のみを販売する既存のプラットフォームと異なり、作品に関連するアニメや映画の映像、グッズなどもシームレスに提供するほか、Twitterで感想を共有するなど「ソーシャルリーディング」機能も搭載予定。紙の書店との共栄も目指す。

 「単なる出版社や映画会社ではなく、渾然(こんぜん)一体となった新しいエクスペリエンスをユーザーに体験していただける世界にする」と、角川グループホールディングスの佐藤辰男社長は意気込む。

ソーシャルメディア連携も

 12月から試験提供するiPhone/iPad向けアプリ(.Book形式に対応)は、電子書籍ストアとビューワとなどに機能を限定。ライトノベルやコミック、文芸、新書を中心に初月約100作品を提供し、毎週20作品ほど追加していく。決済はiPhoneのアプリ内課金で行う。

 まずは、ユーザーに受け入れられる電子書籍の価格などを検証するほか、書店との連携を実験。書店で販売する書籍に個別のIDを振り、そのIDで電子書籍ストアにアクセスすると特別なコンテンツがもらえる――といった試みを検討。新刊の電子での先行発売や、紙との同時発売も検討している。

 来年4月からは、フル機能版(TTXを中間フォーマットに採用)を、iPhone/iPadのほかAndroid端末、PC、その他タブレット端末向けに提供する予定。雑誌や実用書、写真集なども含め、1000作品を配信するほか、グループ外企業の参加も募り、作品数を増やしていく。

 フル版では、電子アイテムの販売機能や、Twitterや外部SNSなどソーシャルメディアと連携して書籍の感想を共有できる機能を提供する予定。クレジットカードやプリペイドカードでの決済にも対応する。グループの「魔法のiらんど」との連携機能や、ソーシャルアプリの提供も検討している。

 同社は、2014年度の電子書籍市場規模(1300億円、インプレスR&Dによる予想)のうちシェア10%・130億円を目指し、新プラットフォームでこのうち30億円以上を稼ぎたい考えだ。

「クラウドの上に星雲を作る」

画像 角川歴彦会長

 自著「クラウド時代と<クール革命>」を期間限定で全文無料公開するなど、電子書籍に積極的に関わってきた角川ホールディングスの角川歴彦会長は、今年を「電子書籍の話題作りの年」と位置づける。

 来年に向けて重要なのは「プッシュ型の仕事」という。「電子書籍や配信事業者は現状、雲(クラウド)の上の星。1点1点を輝いて見せようと思っても、ユーザーが顔を上げてくれないと見つからない。どうユーザーに届け、見て、知ってもらうかだ」(角川会長)

 新サービスでは、グループ10社のコンテンツを結集し、クラウドの上に「星のかたまり、星雲を作る」ことで存在感を打ち出す。新たなビジネスモデルにチャレンジしたり、独自の決済システムを構築するなど、「さまざまな壁も覚悟した上で事業に取り組もうと決断」、100万単位のユーザーを集めていきたいという。

 まずはグループで強みを持つサブカル系文学やライトノベル、アニメなどを中心に展開しながら、「伝統的な文学などにも広げていきたい」という。「独占するプラットフォームになるべきではない」という考えで、「角川グループの文化に共鳴してくれる人が集まる1つの星雲を作りたい」としている。

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