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大沢在昌氏の新作は電子書籍、ケータイ漫画、テレビドラマ同時展開

» 2010年11月12日 19時42分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 角川グループのイベントに参加し、電子書籍について話す大沢在昌さん

 「新宿鮫」などハードボイルド小説で知られる作家の大沢在昌さんが、新作小説「カルテット」(角川書店)を12月、電子書籍で先行販売する。来年1月にはテレビドラマ化するほか、携帯電話サイトでコミック版も展開。「多くの人に受け入れてもらい、参加できる仕組みにしたい」と大沢さんは話す。

 カルテットは、10代の少年少女3人を中心にした全4巻の小説。紙の書籍に先行し、角川グループが12月にスタートする電子書籍プラットフォーム「BOOK☆WALKER」で12月下旬に1、2巻を発売する。ケータイサイト「E★エブリスタ」でケータイ漫画も展開、漫画コンテストも同サイトで行う。テレビドラマは福田沙紀さんと松下優也さん主演。毎日テレビ系列で放送する。

 作品は、テレビドラマ化を前提に5年かけて執筆。大沢さんは「電子書籍はまだ、海のものとも山のものとも分からない」ため、デジタル関連の企画は角川グループなどに任せているが、作家として「電子書籍に前向きに取り組みたい」という。

「夢のような変化は、簡単には起きない」が……

 「電子書籍は今年ぐらいから一気にかまびすしい感じになっているが、夢のような変化は、簡単には起きない」と、大沢さんは電子書籍を冷静に見る。

 iPadやKindleなど電子書籍の閲覧に向いた端末はまだ普及が進んでおらず、「日本人全員、1億人以上が“デバイス”(紙に書かれた日本語を読む能力)を持っている紙の本と比べると、とてつもない産業にはならない」ためだ。

 「かといって、電子書籍を忌避(きひ)してはいけない」とも。同じ作品でも、紙の本より電子書籍で出したほうがメディアの注目が集まり、「話題としての起爆力がある」ため。紙の本は手に取らなかった人が、電子書籍やケータイ漫画を通じて作品を知ってくれる可能性もある。

 「電子書籍も紙の本も利益を食い合うわけではない。1人でも多くの人が楽しみ、盛り上がるためには、相互で力をぶけあう形で展開しないと。紙、電子、ドラマ、コミックなど、とにかくふくらませていって、みんなが興味を持ち、参加できるようにしていきたい」と大沢さんは意気込んでいる。

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