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Google「イノベーションとボトムアップ」の中心 「Google Labs」の存在感

» 2011年03月09日 18時35分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 Google Labs

 「Google Labs」(グーグルラボ)は、Googleの実験的なサービスを公開する場だ。「Google マップ」「iGoogle」「Google リーダー」など今やおなじみとなった人気サービスも、グーグルラボを経て正式公開された“卒業生”たちだ。

 ラボへの参加は全社員に認めており、現在は米国やインド、日本などさまざまな拠点で開発された約80のサービスを公開している。「イノベーションとボトムアップ」を推奨する社風のなかでまさに中心に位置しているのがグーグルラボだと、担当者は語る。

3D人体模型も Google Labのサービスとは

画像 3D人体模型「Body Browser」

 グーグルラボはGoogleの新サービスをいち早く試すことができる。昨年12月だけで6つのサービスを公開。現在は約80サービスを提供している。各サービスに5段階で評価を付けたり、コメントを投稿したりする機能も備え、開発者はユーザーからのフィードバックを取り込んで改善につなげている。

 グーグルラボの取り組みを支援するのは、米Googleの「Google Labs統括チーム」。開発者がグーグルラボでサービスをスムーズに提供できるよう、仕組み作りにあたっている。そのうちの3人が、日本オフィスの開発者にラボ活動を普及するためこのほど来日した。

 Google Lab統括チームテクニカルリードのアーサー・グレックラーさんは「グーグルラボのサービスは完璧な形でなくてもいい。科学実験と同じでうまくいかないこともあるが、目的はすべての実験から学ぶことだ」と話す。

 いくつか具体例を見てみよう。昨年12月に公開した「Body Browser」は、Webブラウザ上に3D人体模型を表示するサービス。メニューを操作すると、模型を回転させたり、筋肉や骨格など体の内部をチェックできる。ブラウザ上で3DCGを表示する新技術「WebGL」を試す目的もある。


画像 Books Ngram Viewer
画像 Google Transliteration

 約2週間で開発したという「Books Ngram Viewer」は、「Googleブックス」の520万冊以上の書籍データから、特定の言葉がどのくらいの頻度で登場しているかを調べ、時系列でグラフ化する。例えば「war」と検索すると、戦争に言及した書籍が1920年、40年代に多いことなどがグラフから分かる。

 「Google Transliteration」は日本・インド・中国のエンジニアが開発した。英語の入力環境しかないPCでも、Webブラウザ上のフォームで、入力した文字を日本語やヒンディー語、ギリシャ語といったさまざまな言語に変換できる。

 ヒンディー音楽を検索する「Indic Music Search」、大手新聞サイトのトップページを一覧表示する「Fast Flip」、インフルエンザの流行状況を世界地図で確認できる「インフルトレンド」など、ほかにもユニークなアイデアが並ぶ。


画像 Indic Music Search
画像 Fast Flip

 「Googleはイノベーションとボトムアップの文化を推奨しており、その中心に位置しているのがグーグルラボ」と、Google Labs統括チームプロダクトマネージャーのメイミー・ラインゴールドさん。「他社のラボのように、ほんのひと握りのエンジニアが新しいアイデアを出すといった孤立した部門ではない」と語る。

 グーグルラボを経て正式公開されたサービスはこれまで18件。Labsの卒業生というページにまとまっている。統括チームプロダクトマネージャーの井上陸さんによると、正式サービス化するかどうかの判断はケースバイケースだが、だいたい9カ月間ほど提供してから決めているという。

 「イノベーションは大きなリスクをとることも意味しているが、新しいアイデアを早くリリースできるよう、プロセスを用意していく」と、ラインゴールドさんは話している。

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