ニュース
» 2011年08月15日 17時04分 UPDATE

呉越同舟も二度目となれば……ヤマハvs.コルグの最新楽器対決をDOMMUNEで見てきた

ヤマハとコルグという電子楽器を代表するメーカー同士がぶつかり合う「GEEK×PLAY#2」は、コルグ「monotribe」、ヤマハ「TNR-i」開発秘話が飛び交う電子戦となった。

[松尾公也,ITmedia]

 昨年末、「GEEK×PLAY#1」という音楽イベントが超メジャーなUstreamのハコ「DOMMUNE」を舞台に開催され、話題を呼んだ。ヤマハ対コルグという、電子楽器を代表するメーカー同士がぶつかり合う、レア感あふれるものだった。8月4日に行われたその第2回対決「GEEK×PLAY#2」にまたもや行ってきたので、リポートしよう。

photo

 第1回の際には3月ごろを予定していた「GEEK×PLAY#2」。東日本大震災の影響もあり、半年ぶりの開催となった。司会は前回と同じく、デチューンの佐野電磁社長。デチューンがコルグと共同開発したニンテンドーDS用シンセサイザー「KORG M01」をさりげなく宣伝しつつ、軽妙洒脱に進行していく。対決する楽器はコルグがアナログシンセの進化形である「monotribe」、ヤマハがTENORI-ONをiOS化した「TNR-i」だ。

呉越同舟ライバルメーカー対決編

 コルグからは製品企画担当の坂巻匡彦さんと、開発の高橋達也さん。ヤマハからはTNR-i開発担当の水引孝至さんが参加した。

 前回はiPadアプリであるiELECTRIBEiMS-20のソフトウェアチームを投入したコルグだったが、今回はガジェット楽器分野で業界一ブイブイ言わせている坂巻さん、高橋さんのコンビだ。高橋さんはかなり大きめの銀色の装置をショルダーキーボードのようにつり下げている。ヤマハの水引さんはエンジニアらしく、推奨服というヤマハの作業着で存在感を示す。

photophoto

 まずは坂巻さんによるmonotribeの説明から。monotribeはアナログシンセ+ドラムマシン。これを高橋さんが試奏してみせる。DOMMUNEの抜群の音響で聴く、腹にずんずん響くキックと太いアナログシンセサウンド。これに対して水引さんが「MIDIないんですか?」と軽くジャブ。坂巻さんは「アナログシンセには不要」と一蹴。ここから、コルグにアナログシンセを復活させるためのストーリーを語り出す。

photo

 坂巻さんはかねてから「アナログシンセをやりたい」と考えていた。「アナログの回路が分かっていて、若い人がほしかった」。名機「MS-20」の開発者は社内に残っているが、それだけでは十分ではない。若い力が必要なのだ。そこに入ってきたのが高橋さん。「コルグに入りたい」と8ステップのアナログシーケンサーを自作して入社。すぐに坂巻さんに目をつけられる。喫煙室で「ノブ4つで5000円のアナログシンセ、作れない?」と勧誘。そして作られたmonotribeプロトタイプ(写真下)と完成形(写真上)。詳しくは四本淑三さんの記事を(その1その2)。

 プロトタイプにはOSC2というノブがある。これは2個目のVCO(オシレーター)ということで、初期仕様はそうなっていた。製品版はVCOの数が1つ減って1VCO。音を改良していくうちに現在の仕様になった。当初は音色やピッチを周期的に変調させるためのLFOもなかった。音色に関しては、MS-20の開発者である大先輩からのアドバイスももらった。「高橋君の回路は測定器みたいだね」。これが発奮材料になった。

 monotribeのプロジェクトが一段落すると、坂巻さんが、「上に行こうよ。ELECTRIBEのアナログ版作ろう。2万円以下で金属筐体で」と高橋さんに。金属筐体にすると、エイジングされると味が出るのでやりたかった。この試作機は社内のベテランエンジニアが作ったのだが、「本気出し過ぎ」の出来映えで、そのまま持ち帰りたいほど。

photophoto

 monotribeは単なるアナログの再現ではなく、最新のデジタル技術とアナログをマッチさせた。例えばオートチューニングによる音高補正。リボンコントローラでありながらクロマチックに音が出る。「不安定じゃなく、安定もしていない」という設定をしていると坂巻さん。

photo

 次はヤマハのターン。「monotribe、すばらしいですけど音色保存できるんですかー?」と悪役っぽい導入で水引さんがiOSアプリのTNR-iを紹介する。TNR-iの原型であるTENORI-ONはメディアアーティストの岩井俊雄氏が考案。2007年に英国で先行発売し、翌2008年には国内発売もされた、表裏それぞれ256個のLEDボタンをマグネシウムボディに搭載したユニークな電子楽器。ビョークがステージで使っていることでも知られている。ただし、妥協しないスペックもあって、12万円を超える高価格のため、一般的に普及するには至っていなかった。

 この状況を打開するため、完コピでiPadに移植したのがTNR-i。「TENORI-ONをたくさんの人に使ってもらいたい。ハードのバグすら持ってこよう」と開発したのだ。たしかに一部機能以外は見事に再現されている。

 iPadへの移植は、企画担当から「やろうか」というメールが来て始まった。コルグがiPadアプリiELECTRIBEをいきなりリリースしたのが衝撃だったようだ。

 でも最初にやったのは「QY10じゃないのね」と指摘する佐野さん。QY10はVHSカセットサイズの小型音源内蔵シーケンサーで、「iPhoneやiPadに移植してほしい」という要望が強い。いや、これもほしいのだが……。

 TNR-iは3月くらいには完成していたが、すぐにはリリースされなかった。TENORI-ONの販売・企画担当との交渉の末、ようやく発売されたのが6月。価格は2300円。iPadだけでなく、iPhone、iPod touchでも動作する。現在はApp Storeの価格改定により1700円とさらに安くなっている。

 TNR-iには本家TENORI-ONにはない、iOSならではの機能がいくつかある。その代表的なものが、iOSのGame Centerを使ったリアルタイムセッション機能だ。Game Centerは、Appleのネットワークを介してゲームユーザーが対戦をするために用いるのが一般的。それを楽器のセッションに応用したのはこれが初めてだろう。そして、佐野電磁さんがGame Center経由で視聴者とセッションするデモが始まった。

photophoto

 Game Centerでのセッションは最大4人まで。あらかじめ登録した友達ともできる。ここで坂巻さんもTNR-iユーザーであることを告白。ヤマハとコルグの取っ組み合いで終わるはずが……。

アーティスト演奏編

photo

 続いて両社の楽器を駆使した、アーティストによる演奏に入る。最初はコバルト爆弾αΩ(アルファオメガ)。アキバ周辺でプログラムを書きまくって演奏する集団(Max/MSPだそうだ)。monotribeでブリブリのノイズを出し、TNR-iは2台使ってコード弾きのようなものを多用していた。

photophoto
photo

 次は名古屋を拠点に活躍するuncTKさん。ハービー・ハンコックのRock ItがきっかけでDJになったという古参だ。もともとはドラマーだったが、ドラムは重いからDJに転身したという……。TNR-iは16のチャンネルに異なるパターンを配置して、それを自由に切り替え、monotribeの太いアナログサウンドを入れていくという構築法。

photophoto

 ゲストアーティストのラストは、アルバム「相愛性理論」「愛迷エレジー」で、既にメジャーで活躍中のボカロP、DECO*27さんと、同じくボカロPであり「機械の花ラボラトリ」をリリースしたkousさんによるユニット。ステージには2台のmonotribeとiPhoneが。iPhoneにはコルグが無償で提供している楽器同期演奏用のアプリ「SyncKontrol for monotribe」が組み込まれている。iPhoneから2本のオーディオケーブルが分岐してmonotribeに接続されていて、2台がのmonotribeが同期する仕組みだ。

photophoto

 意外なことに、DECO*27さんにとって初めてのハードウェアシンセがmonotribeだったそうだ。DAWはLogicで、ソフトシンセばかりを使っていたらしい。「遊びながらクルクル回して」monotribeを楽しんでいるという。

 今回のゲストの中で唯一、コルグ製品のみを使っていた2人に、水引さんがTNR-iのさまざまなモードや演奏方法を伝授。DECO*27さんも最近TNR-iをインストールしたそうだ。

photo

 最後は出演者全員で合奏!  佐野さんがM01ならではの音色で締めて、 呉越同舟ライブ「GEEK×PLAY#2」は和気あいあいとした雰囲気で終了したのだった。ちょっと和気あいあいしすぎて緊張感が足りない感じがしたので、次回はぜひ、もう1社を加えて殺伐とした雰囲気で開催してほしい。これは企画者の心の声でもあるようなので、ぜひ実現をお願いしたいものだ。

photophotophoto

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -