「弱音をはける場所はここしかない」「どんなネガティブなことを書いてもコメントがつくと救われる」──「引きこもり」の20代の女性を自称するユーザーが書いた「ネガティブな」日記には、ネット上の友人「マイ引きこもり」からの「元気出して!」、「何も考えずに好きなことをすれば良い」といった暖かい応援コメントが投稿される。
ここは「引きこもりのためのSNS」をうたう「hixi」(ヒッキー)。トップページには「ここにもう一度私たちの帰る場所を作りましょう!」とある。
「hixi」は5月上旬に立ち上げられ、会員数は1週間で1700人を突破したという。SNSとは、人と人とのつながりを促進・サポートするためのコミュニティー型のWebサービスだ。私は、そのような性質のSNSと他人との交流を避ける傾向にあるひきこもりとの融合に違和感を覚えた。会員は本当にひきこもっているのか? 調べてみることにした。(早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース 松井 道太郎)
この記事は早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの「ニューズルームJ」の受講生が執筆しています。ニューズルームJは、ブログ「ガ島通信」を執筆するジャーナリストの藤代裕之氏の指導により、日本で初めてインターネットを活用したライティングを学んでいます。
ある日、ひきこもりや非リアと呼ばれる人々のためのSNS「hixi」(ヒッキー)の会員数が、立ち上げから1週間で1700人を突破したというニュースを目にした。SNSとは、人と人とのつながりを促進・サポートするためのコミュニティー型のWebサービスである。わたしは、そのような性質のSNSと他人との交流を避ける傾向にあるひきこもりとの融合に違和感を覚えた。
Google検索で「ひきこもり系SNS」「ひきこもり SNS」などと検索すると1つではなく、複数のSNSが表示された。1つではなさそうだ。
今年の5月9日にオープンした「hixi」の管理人は、自身のブログにおいて「昔と比べて最近は一般の人もWebを利用するようになり、私の居場所がなくなってしまったような気がしています。そのため明確に私たちのような引きこもりや非リアが笑顔で暮らせる世界を構築しました。」と述べている。「hixi」は、ひきこもりや非リアな人々専用の交流の場ということなのだろう。他のひきこもり系SNSの管理人も総じて、自身の運営しているSNSについて「ひきこもりのためのSNS」と説明している。では、ひきこもりSNSの会員達は本当にひきこもりなのか、ひきこもりSNSの中ではどのようなコミュニケーションが行われているのか。SNS内に潜入し、調べることにした。
Google検索で「ひきこもり系SNS」「ひきこもり SNS」などと検索した結果、上位1−3ページに「ひきこもり・ニートSNS」「(仮)ひきこもりSNS」「ひきこもり壮」「ひきこもり島」「象牙の塔SNS ひきこもり村」「ひきこもりぃた」「hixi」「引きこもりSNS」「ひきこもりSNS」の9つのSNSが表示された。
この中で「ひきこもり・ニートSNS」「象牙の塔SNS ひきこもり村」「ひきこもりぃた」「hixi」「引きこもりSNS」「ひきこもりSNS」の6つのSNSに登録することができた。「ひきこもりぃた」は女性専用SNSということであったが、潜入に成功した。ここでは、その中で会員数が1000人を超える「ひきこもり・ニートSNS」と「hixi」の2つのSNSの内容について調べてみた。「ひきこもり・ニートSNS」にはひきこもり・ニートからの脱出というコピーもつけられている。
会員数 | 性別 | 年齢構成 | |
---|---|---|---|
ひきこもり・ニート | 1226人 | 男67%・女33% | 10代:2%、20代:63%、30代:32%、40代以上:3% |
hixi | 2374人 | 男74%・女26% | 10代:19%、20代:67%、30代:13%、40代以上:1% |
数値は2011年6月末時点,
会員数は最大で「hixi」の約2400人であり、「mixi」などの大手SNSと比べると、そこまで大規模なものとはいえない。性別に関しては、双方とも男性が7割近くであった。年齢構成に関しては、20代が構成の中心であった。「ひきこもり・ニートSNS」に関しては、30代が全体の約3割を占め、「hixi」は10代が全体の約2割を占めた。
ひきこもり系SNSには日記機能、コミュニティー機能、足跡機能、アルバム機能などのサービスがあり、「mixi」に酷似している。これは、上記グラフのSNSも含めたほとんどのひきこもり系SNSがオープンソースのSNSシステムである「Open PNE」を使用しており、このシステムのインタフェースがmixiを参考にしていることが原因である。そのため、ひきこもり系独自の新サービスは見受けられなかった。しかし、ひきこもり系SNSでは、会員のトップページに友達を含む全ての会員の日記が更新順に掲載されていた。このような仕様は、SNS内での交流を促す運営者側の試みなのではないかと感じられた。
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