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「弱音をはける場所はここしかない」──「ひきこもり系SNS」のいま(2/2 ページ)

» 2011年09月16日 19時04分 公開
[松井道太郎,ITmedia]
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 ひきこもりSNS内の会員のプロフィールには、「ひきこもり」「鬱」(うつ)「ニート」などのネガティブな言葉が並ぶ。実名や自分の写真を掲載している人もいない。また、半数ほどの会員が1カ月以上ログインしておらず、半数以上の人が友達0という状態である。日記を書く人も少なく、SNS内における活発な利用、会員間の交流が積極的に行われているとは言いがたい。

 日記の内容は、プライバシーの問題があるので詳しくは書けないが、身の回りの出来事(家の中)と、アニメやゲームの話題が多い。会社や学校などでの出来事を書く人は、ほぼ皆無である。コミュニティーはあるが、数はそこまで多くない。ひきこもり・ニートSNSには40あり、そのほとんどは雑談系の交流コミュニティーであった。「hixi」には174あり、地域別交流コミュニティー、アニメ、ゲーム、音楽に関するコミュニティーがそのほとんどを占めた。また、コミュニティーの参加人数は多くても20人前後で、コミュニティー内での書き込み、交流などもほとんど見られなかった。

「hixi」のユーザー達

 しかし、一部ではあるが、ひきこもり系SNSを積極的に活用している人々もいる。ある20代のひきこもり女性(自称)は、「hixi」で1週間に2回ほど日記を書いている。彼女は日記内で「弱音をはける場所はここしかない」とつぶやく。また、「どんなネガティブなことを書いてもコメントがついて救われる」「ひきこもりに対して偏見がなく、とても居心地がよい」とも書いている。彼女は日記を全体公開にしている。そのため、彼女の日記には、mixiでいうところの「マイミク(hixiではマイ引きこもりという名称)」以外の人々がコメントを残している。

 「hixi」では、彼女のみならず、日記を全体公開にしている人々はかなり多い。アラフォーのひきこもり男性と称する、あるユーザーは、全体公開している多くの日記にコメントを残している。前述した女性の日記にも多くコメントを残していた(しかし、マイ引きこもりにはなっていない)。このユーザー自身も6月末から連日、全体公開形式で日記を書いている。彼は求職中であり、日記内容もそれについての内容が多かった。最新の日記を読むとどうやら就職先が決まったらしく、8月末から働き始めるようだ。就職の報告をする彼の日記には多くの人々からの祝福のコメントが並んだ。そのほとんどは彼の「マイ引きこもり」ではない人々からであった。

 今回調べてみた結果、ひきこもり系SNSの会員は少なくとも「自称」ひきこもり、元ひきこもりがそのほとんどを占めていた。そして、一部ではあるが、ひきこもり系SNS内でのコミュニケーションは行われていた。彼らは日記を全体公開することで、見ず知らずの人に自らの不安や葛藤を曝け出し、互いに励ましあっていた。このようなコミュニケーションのあり方も「人と人とのつながりを促進・サポートする」というSNSの本旨に合ったものなのではないだろうか。

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