部屋とディスプレイとわたし
そろそろ「ガンダムUC」という“現象”に気がついたほうがいいのかも(1/3 ページ)
今回はオッサン向けに特化した内容ですみません。そして、「俺は最初から追いかけているよっ!」という人にも申し訳ないところですが、私はここにきて福井晴敏さん原作のアニメーション作品「機動戦士ガンダムUC」は、ただ優れた作品であるだけではなく、ひとつの特別な“現象”であると感じ、その本質について考えたほうがいいと思うようになりました。なぜならこの作品には、面白いだけではない、2つのユニークな特徴が感じられるのです。
ひとつ静かなる大ヒット
ちょっと定量化するすべがなく、主観で恐縮ですが、「ガンダムUC」の特徴のひとつ目は、その成果に対して世の中の反応が静かであること。「新作が出るたびに掲示板でスレが立つよ」「俺のまわりでは盛り上がってるよっ!」という方には恐縮なところですが、なんといっても「ガンダムUC」は、最新作、2012年6月発売の「episode5 黒いユニコーン」のブルーレイ版で初週売上げ、約9万9000枚を達成した作品(DVD版は約4万4000枚。オリコン「『ガンダムUC』シリーズ3作目のDVD&BD同時首位」より)。
これは同時期のアニメ話題作とくらべても数倍の実績であり、そもそも年間の映像コンテンツの売上げとしても、それまでトップだった2011年12月発売、「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーンブルーレイ+DVDセット」の約6万2000枚を抜き首位となっています。
この実績は、日本のコンテンツ産業の「寒い時代だと思わんか」という現状を考えると、もはや社会現象としてとらえてもいいニュースヴァリューがあると思うのですが、そこまでの展開はメディアでもネットでもまだ見られないように感じます。このような現象はかつてあったでしょうか。
ふたつ目、特異なマーケティング
そしてふたつ目の特徴は、これまた主観で恐縮なところですが、この作品の持つ特異なマーケティング。おそらくなのですが、この作品は余分なことを考えずに、いわゆるファーストガンダム世代、1979年放映の「機動戦士ガンダム」に、なんらかの形でリアルタイムにふれた人に見てもらうことだけを考えてつくっている。
よく言われるような「子どもはヒーローに、お母さんはイケメンにうっとりして親子そろって楽しむことができます」とか、「コアな層を確保しつつ、新たな世代に向けてもコンテンツ開発を行います」などとは考えず、むしろ細かいところまでオッサンホイホイを仕掛けて(たとえばSF考証設定の担当を置き、ちゃんとクレジットしていたりとか)、現在中年以上の層に見てもらうことを、想定しているフシがあります。
そんな「オッサン向け」のターゲティングがなぜ特異なのかというと、まさに今「ガンダム世代」の男性は、日々感じておられると思うのですが、世の中をながめるとメディアで取り上げられるニュースは「女子会」やら「イクメン」やらスイーツやファミリー向けの情報ばかりで、中年のオッサン単体向けに大規模な商業が展開されることはほぼない。テレビドラマや映画作品も、報じられるのはイケメンや女性アイドルグループの起用が話題にしてばかりで、オッサンはハナから相手にされていません。私のように心の狭い人間は、男性アイドルが主役級に起用されているだけで「見るか、そんなもん」と感じてしまうのですが。
ただそれも無理もないところもあって、現代を高度消費社会ととらえるならば、その消費の主役は女性。そのためオッサンは相手にされてこなかった。マニアックでニッチな分野しか、残されていませんでした。
2004年に日本経済新聞社が「復権 男の消費」というレポートを刊行し、ファミリーカー全盛の時代に、セダンが売れ始めている。男性向け消費復権の「兆候」が見られると報じたことがありました。しかしどうやらその後も「婚活ブーム」やらなんやらで、中年男性の消費の復権は訪れなかったと見ていいと思います。
こうした時代に、「ガンダムUC」は常識の逆をついて、オッサンを対象に大規模な商業を展開。「ガンダム」というブランドを背負い、オリジナルのシリーズを製作し、しかも大きな成果を実現している。これは今までになかった出来事だと思います。
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