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今年は「五感」に注目 IBMの“5つの未来予測”2012年版

» 2012年12月18日 19時30分 公開
[ITmedia]

 米IBMは12月17日(現地時間)、今後5年間で人々の生活を一変させる5つのイノベーション「Next 5 in 5」の2012年版を発表した。

 5 in 5は、2006年からIBMが毎年行っている未来予測。今後の5年間に世界の人々の働き方、遊び方、生活を一変させる可能性を持つイノベーションを5点紹介している。今年は人間の五感をコンピュータ独特の方法で模倣する能力に焦点を当てた。

  • 触覚:電話を通じて触れることができる
  • 視覚:1ピクセルが一千語に値する
  • 聴覚:重要なことをコンピュータが聞く
  • 味覚:デジタル味蕾(みらい)でスマートに食べる
  • 嗅覚:コンピュータが嗅覚を持つ

電話を通じて触れることができる

 5年後にはモバイル端末を使って製品を「触る」ことが可能になることにより、小売などの業界は変化するという。

 現在、IBMの研究員は、購入者が端末の画面で商品の画像を指でなぞったときに、布の質感や織り方といった触覚をシミュレーションすることを可能にする触覚、赤外線、感圧技術を使用した小売、医療、そのほかの分野向けのアプリケーションを開発している。

 また、電話のバイブレーション機能を利用して、すべてのものにタッチ体験を表す固有のバイブレーションパターンを持たせる。例えば、間隔が短くて速いパターンや長くて強いパターンなどである。バイブレーションパターンでシルクとリネンまたは綿を区別し、実際に素材に触れたときの物理的な感覚のシミュレーションを支援する。

1ピクセルが一千語に値する

 現時点でコンピュータが画像を理解するには、タグ付けやタイトルに使用されているテキストが頼りだが、情報の大部分(画像の実際の内容)は謎のままである。今後5年間で、システムは画像や視覚データの内容を認識できるようになるだけでなく、ピクセルから意味を見い出し、人が写真を見て理解するのとよく似た方法で理解し始めるという。

 将来は、脳のような機能を使って、視覚メディアから色やテクスチャーパターン、エッジ情報といった特徴を解析し、洞察を得るようになり、医療、小売、農業などの業界に大きな影響を与えるとしている。

重要なことはコンピュータが聞く

 5年以内に、賢いセンサを使った分散システムが、音圧、振動、さまざまな周波数の音波といった音の要素を検出するようになり、こうした入力データを解釈して、森の中で木が倒れるときや、地滑りが起こりそうなときを予測するという。

 またシステムが感情を学習し、雰囲気を感じることができるようになれば、会話の内容を正確にとらえ、声の高さや口調、躊躇(ちゅうちょ)などを解析して、より実りの多い会話が成立する。これによって、コールセンターでのやり取りは改善され、異なる文化的背景を持つ人とも円滑にコミュニケーションできるという。

 現在、IBMの研究員はアイルランドのガルウェイ湾で水中のノイズレベルの記録を始めている。水中センサーを使用して音波をとらえ、それを受信システムへ送信、解析することで、波エネルギー変換装置の音や振動を理解し、海洋生物への影響を調べている。

デジタル味蕾でスマートに食べる

 IBMの研究者は、実際に味を感じるコンピュータシステムを開発している。同システムは食材を分子レベルまで分解し、食物の組み合わせの化学を、人が好む味付けや風味の背景にある心理学と融合する。これを数百万種のレシピと比較することで、例えば調理した赤カブ、キャビア、生ハムなどの食材と焼き栗をペアにして、新しい味の組み合わせを創造できるようになるという。

コンピューターが嗅覚を持つ

 5年以内には、コンピュータや携帯電話に埋め込まれたごく小さなセンサーで、風邪などの病気の前兆を検出できるようになるという。それにより、医師は、臭気、人の息に含まれる生体指標や数千もの分子を解析し、正常なにおいとそうでないにおいを検出することで、肝臓疾患、腎臓疾患、喘息、糖尿病、てんかんといった病気の発症を診断、モニタリングできるという。

 既にIBMの研究員は、芸術作品を保護するために環境の状態や気体を感知する技術を実用化している。実際、臨床衛生の問題に取り組むために、このイノベーションが適用され始めているという。

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Cognitive Computing: 5 Future Technology Innovations from IBM

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