API公開は、サービス事業者にメリットをもたらす一方、コストも小さくない。社外用にソースコードを書き直したり、ドキュメントを整備する必要がある上、公開してもどれぐらい使ってもらえるかは未知数。使われなければ、公開にかけたコストが無駄になるし、使われ過ぎるとサービス本体のサーバを圧迫するなど、影響が出ることもある。
さらに厄介なのは不正利用者の存在だ。API経由で大量のアクセスを浴びせ、DoS攻撃のような形でサービスを麻痺させたり、投稿APIを悪用し、自社サービスの宣伝書き込みを大量投稿してデータを荒らすなど、APIを悪用する個人や業者も少なくない。
「APIの一般公開は、メリットとデメリットのバランスが難しい。エコシステムのバランスが崩れると生態系が崩れ、サービスが縮小してしまう。最近は、サービスの成長に寄与するのがいいAPIとされ、企業と開発者の間でのエコシステム構築戦略が必要になっている」(鎌田さん)
ヤフーの検索APIは、無料のままではデメリットがメリットを超えるという危機感から、有料化を決断したという。
検索APIは、サイト内検索など正規の利用が下火になる一方で、悪意のあるSEM/SEO業者が検索スパムに活用するなど不正利用が増加。サービスやビジネスへ悪影響が無視できなくなってきたという。「市場に任せるのが難しく、性善説ではいられない」と、同社の一条裕仁さん(メディアサービスカンパニー 検索プラットフォーム プロダクトマネージャー)は、有料化を決めた背景を語る。
有料化は不正利用のハードルを上げるためで、収益目的ではないとしており、できるだけ低料金で利用できるよう配慮。1日500件まで検索できる「スタンダード」プランはYahoo!プレミアム会員(月額399円)の料金内で利用できるようにするなど、「不正利用者を排除しつつ、一般的な利用は問題ない水準に保てる」と同社の橋本恭明さん(メディアサービスカンパニー 検索プラットフォーム サービスマネージャー)は料金設定で腐心したことを明かす。
「以前、スタートアップベンチャーにいたとき、ある企業の翻訳APIが有料になって困ったことがある。開発者の気持ちも分かるのだが……」(一条さん)。ネット企業として、APIの有料化は苦渋の決断だったようだ。
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