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変わるAPIのエコシステム ヤフーはなぜ、検索APIを有料にしたか(3/3 ページ)

» 2013年01月15日 11時04分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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「ネットの第1部・完」

 APIの無料公開ブームが始まったのは、「Web 2.0」という言葉がもてはやされた2005年前後だ。企業が囲い込んでいるリソースや、個人が持っている専門知識などをネットに無料公開することで、何か良いことが起きるはずだという希望が、ネットユーザーの間に広がっていた。

 あれから7年。リーマンショックを経験し、ネットの大規模サービスが収益性の低さにあえぐ中、その“常識”も変わってきた。Twitterはビジネスを成り立たせるためにAPIの利用制限を強化し、世界で10億ユーザーを集めたFacebookは株価の低迷に悩んだ。ブログブームは落ち着き、有料メルマガや、課金コンテンツプラットフォームが期待を浴びている。

 「以前は、マネタイズを限界まで先送りしてプラットフォームに人を集め、市場を支配すれば勝てるという価値観があったが、ここにきて急速に変わってきた」。こう話すのは、情報学の研究者で、TwitterのAPIを活用したサービス開発の経験もある、大向一輝 国立情報学研究所准教授だ。

 そもそも、情報やシステムのオープン化は、「弱者の戦略で、ゲリラ戦に有効な武器」(大向准教授)だ。ベンチャー企業が開発したTwitterは、APIを公開することでマーケティング費用をかけることなくユーザー数を2億人以上に拡大させたが、ミニブログの世界を支配した今、APIを太っ腹に解放し続けるメリットもなくなっている。

 何もかもが無料で利用できて当然というWeb 2.0の時代の空気は、ネットがまだ“ゲリラ戦”の場だった過去の一時期の異常な状態だったのかもしれない。ここ数年でネットは急速に一般化し、価値あるものを提供して対価を得るという、普通の世界の常識を適用できるようになってきた。「小さかったものがふくれあがって、普通の世界と融合しそうな段階。『ネットの第1部・完』みたいな感じだ」(大向准教授)

 ネットの第1部が終わり、第2部が始まりつつある。第1部をけん引してきたのは“ナナロク世代”と呼ばれた1976年前後生まれだが、次の時代を引っ張るのはおそらく、小さなころからPCやスマートフォンを使っている“デジタルネイティブ”の世代だ。その時にはまた、「想像を絶するものが出てくるだろう」(大向准教授)

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