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ミクシィ“家族SNS”に参入 子どもの写真、容量無制限で共有「みてね」 笠原会長が企画、自らビラ配り「生涯プロデューサーでありたい」(1/3 ページ)

» 2015年04月13日 15時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

 4月初旬の駒沢公園。花見を楽しむ人々に、ビラを配る1人の男性がいた。近所の飲食店の店員……ではない。ミクシィ創業者で現在は取締役会長の笠原健治さんだ。「いいものを作れたと思っているので、広めたくて。ビラ配りは慣れてなくて、なかなか話を聞いてもらえなかったけど……」。

画像 「みてね」の紹介ビラ

 ビラには、スマートフォンアプリ「家族アルバム みてね」(iOS/Android対応)の紹介が書かれていた。子どもの写真や動画を容量無制限でアップロードし、遠方に住む祖母・祖父など家族と共有できるアプリだ。ミクシィの新規事業として笠原さんが企画。自らマーケティングやユーザーサポートなどを手がけると同時に、1人のユーザーとして妻や両親と一緒に使っている。

 「娘が生まれたとき、はたと困って」。原点は笠原さん自身の経験だ。2013年に長女、翌年に次女に恵まれたが、子どもの写真や動画を親と共有する方法に困り、専用アプリの開発を思い立った。昨年6月ごろから本格的に開発を始め、同12月にテスト公開。改良を重ね、4月13日に正式公開した。

 アプリは完全無料で利用でき、現時点での収益はゼロ。まずは使い勝手の向上とユーザー数拡大に力を注ぐ考えだ。「ユーザーにとってなくてはならないサービスしたい。それが実現できれば、収益は後から付いてくると思う」――いいサービスには収益が付いてくるという信念は、11年前、mixi開始初年に話していたものから全く変わっていない。

写真をたくさん、気軽に共有 「足あと」ならぬ「みたよ履歴」も

 「みてね」は、子どもの写真や動画を家族だけで簡単に共有するアプリだ。写真を選んでタップするだけでアップロードでき、複数枚のアップも気軽。「より気軽に、より多くの写真をアップしてもらいたい」と、ユーザーインタフェースの快適さにこだわった。


画像 トップページにはアップした写真がアルバム状に表示される
画像 写真の更新やコメント情報が一覧できる「近況」。誰がいつ見に来たかを示す「みたよ履歴」も
画像 家族を招待できる

画像 コメントのイメージ

 写真・動画は撮影日時に応じて順番に整理され、アルバムのような画面で一覧できる。トップページには当月の写真が表示され、右スワイプで前月、左スワイプで次月の写真一覧に移動。次々にスワイプするだけで子どもの成長が実感できる設計にした。

 写真や動画をアップロードできるのは、子どもの父と母だけ。祖母・祖父などほかの家族は、コンテンツの更新通知をメールで受け取り、Webブラウザから閲覧・コメントする仕組みだ。いつ誰が閲覧したかを示す「足あと」……ならぬ「みたよ履歴」も備え、父母が写真をアップロードする際のモチベーションが高められるようにした。

動画が取得できませんでした
タレントの藤本美貴さんの1秒動画

 過去にアップロードした20本の動画から1秒ずつ切り出し、次々に再生する「1秒動画」機能も搭載。写真の自動スライドショーのようなイメージで、たくさんの動画を気軽に振り返ることができる。1秒動画の仕組みは特許を取得しているという。

「孤育て」を支えたい

画像 笠原会長

 開発のきっかけは、笠原さんの長女の誕生だ。生まれてから撮りためた長女の写真や動画を遠方の両親と共有したかったが、手ごろなサービスが見当たらず、自ら新規事業として立ち上げることにした。

 Facebookやmixiなど一般のSNSやブログなどでも共有できるが、見ている人が必ずしも子どもに興味があるとは限らず、プライバシーも気になる。Dropboxなどオンラインストレージで共有する手もあるが、操作が難しかったり、写真や動画に直接コメントできないなどの難点がある。

 「みてね」なら、家族間だけで共有できる上、「みたよ履歴」やコメントが付くことでアップロードのモチベーションも上がる。父方、母方の家族がそれぞれコメントし合えば、お互いの家族への理解を深めるツールにもなる。

 「“孤育て”を支えたい」と笠原さんは言う。親族や近所の協力を得られず、母親が子育てで孤立してしまうことが社会問題化している。「みてね」を通じて日常的に子どもの近況を配偶者や祖父母と共有できれば、離れていても分かり合え、家族で支え合えるきっかけになると期待する。

 家族で「みてね」を使うことで笠原さんは、父母と電話する回数が減ったという。毎日「みてね」をチェックしてコメントし合うことでお互いの状況が分かり、電話しなくても安心できるようになったためだ。「遠くに住んでいる家族とも、スープの冷めない距離に住んでいるような安心感を提供できるのではないか。みんなで少しずつ、子育てに関わっていく仕組みを作りたい」

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