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ミクシィ“家族SNS”に参入 子どもの写真、容量無制限で共有「みてね」 笠原会長が企画、自らビラ配り「生涯プロデューサーでありたい」(2/3 ページ)

» 2015年04月13日 15時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

「家族SNS」にビジネスチャンス 「収益化は急がない」

 昨年12月の試験公開以来、1カ月に倍増以上のペースでユーザー数が伸びている。広告はほとんど打っておらず、口コミのみで拡大。継続率も非常に高いという。

 みてねは新たなSNS――「家族間SNS」という位置づけのサービスでもある。同社のSNS「mixi」は、リアルの友人や趣味の「コミュニティ」などで知り合った興味関心を同じくする人同士のソーシャルグラフを形成している。一方で最近は、カップル専用SNSなどより小さなコミュニティーに特化したバーティカルSNSがユーザーを伸ばしており、そこに商機があるとみている。

 「家族間コミュニケーションの入り口を取りたい。ネット上のコミュニケーションが成熟する中で、より特化したコミュニケーションサービスに対するニーズも生まれている。家族SNSにもビジネスチャンスがあるのではないか」

 基本機能は無料を貫く予定だが、収益化の案も温めている。有料の「プレミアムユーザー」制度を作り、専用の追加機能を実装したり、広告を掲載したり、同社のフォトブックサービス「ノハナ」と連携し、アップロードした写真からフォトブックを作るサービスを提供したり、写真や動画を有料でDVD化したり――などだ。

 子育て関連グッズや孫の誕生日プレゼント用ギフトなど、通販サービスとの連携も視野に入れる。早期に100万ユーザー達成を目指し、数年後に数十億程度の売上げが立つサービスに育てたい考えだ。

 ただ、収益化は急がない。「クックパッドや食べログなどのサービスも、収益化にそれなりに時間をかけていると思うが、時間をかけた分強いサービスができあがっていると思う。ユーザーにとってなくてはならないサービスにできれば、収益化に時間がかかること自体は、必ずしも悪いことではない」。

 海外にも先行モデルは見当たらないとし、世界進出も計画している。「海外に出るには残り時間があまりない。家族コミュニケーションの市場は、1社が生き残ることができる程度の規模。1〜2年以内に出さないと、領域としては閉まってしまうだろう」と考え、展開を急ぐ。

自らユーザーサポート、ビラ配りも 「ユーザーから愛情感じる」

画像 笠原さんの席はチームメンバーと横並びだ

 笠原さんはミクシィ創業者で取締役会長という立場ながら、「みてね」開発の現場でバリバリ働いている。企画やチーム統括だけでなく、ユーザーからの問い合わせへメールに返信するユーザーサポートも自ら行い、マーケティングの一環として、サービスを紹介するビラを公園で配った。オフィスの座席はチームメンバーと横並び。チーム全員が帰った後、深夜まで残業することもある。

 ユーザーからの温かい声が何よりも励みだと顔をほころばせる。「ユーザーサポートに届く問い合わせの中身が好意的で。mixiの時と似ていて……。不具合報告をもらう時も、『いつも使っています』とか『家族が楽しみにしているので』とか好意的なコメントを付けてくれたり、問題が解決した後も返信をくれたりとか、ユーザーさんの愛情を感じることも増えてきている」。

 mixiも、開始当初からユーザーの熱量に支えられたサービスだった。特に初期のユーザーの熱量は大きく、スタート初年、mixiがもうかっていないと知ったユーザー有志が、mixiのビジネスモデルを考えるイベントを自主的に開催してくれたこともある。

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 チームメンバーにも恵まれたと話す。「ミクシィの社員はmixiが好きで入社した人が多い。もともとコミュニケーション分野に興味があった人達で、話が早い。写真を一気に無制限にアップロードできる処理の仕組みや上がった写真や動画を効率良くストレージするノウハウも、ミクシィだからこそ。優秀なデザイナーやエンジニアに恵まれた」。

ばく大な資産もあるが……「生涯プロデューサーでありたい」

 笠原さんは2013年にミクシィ社長を退任。代表権のない会長に退き、新規事業を生み出そうと奮闘してきた。今後もサービス開発の前線にい続け、「生涯プロデューサーでありたい」という。

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