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チケット1枚“数十万円”のケースも……高額転売を撲滅せよ 「顔認証」はライブイベントを変えるか(3/3 ページ)

» 2016年06月09日 14時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]
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photo テイパーズ 冨澤孝明常務

 冨澤さんは、当日発券システムによるIT化の最大の利点を「不特定多数が“特定多数”になること」と表現する。人手でのチケットもぎりと比べて来場者数をリアルタイムかつ正確に把握できるほか、購入者と来場者を高い精度で一致させることでファン属性も把握しやすくなる。顧客へのプロモーションやマーケティング施策に役立つデータとして、継続的に利用できるのも大きなメリットという。

 「公演中にトイレで倒れたお客さんがいたとしても、転売された可能性のある紙のチケットの半券では、本人かどうかや同伴者がいるかどうかも分からない。来場者の情報をデータベース化していれば、名前や連絡先、同伴者の有無をシステム上ですぐにチェックできる。当日発券システムを用いたイベントで、緊急時、公演終了を待たずに同伴者に連絡がとれて大事に至らなかったケースが実際にあった」(冨澤さん)

 当日発券システムは2009年の初導入から年々利用が増え、15年末までに約800公演で導入された。今年は“2016年問題”と呼ばれる会場不足で公演数自体が少ないが、今年中に累計1000件を超える見込みだという。今後は音楽イベントだけでなく、スポーツ観戦イベントへの応用も見込んでいる。

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「仕方がない」はITの力で解決できる

 転売を含む2次流通を肯定する意見として、顔認証などで本人確認を厳しくしすぎると、本人が病気や怪我などで来場できなくなった時に人に譲りにくいという声がある。この問題への解決策として同社が提供している最新施策の1つが「マッチングシステム」だ。マッチングシステムでは、やむを得ない事情でチケットを譲渡する場合、運営者が取り引きを仲介できる仕組みを整えている。

 最新の導入事例となった「ももいろクローバーZ」のコンサートでは、ファンクラブ会員を対象にチケット譲渡希望者と購入希望者を募り、抽選でマッチングを実施。当日発券システムを用いるため、購入情報はIDにひもづいており、取り引き完了後も紙のチケットを郵送することなくチケット発券権を譲ることができたという。

 マッチングシステムは定価での譲渡を促進し、取り引きを簡素化するだけでなく、拾えるニーズの幅も広がるという。例えば「友達と2人で行きたい」「家族4人で行きたい」という場合、一般的なチケット譲渡サイトやオークションサイトで探すのは比較的難しい。マッチングシステムを介せば、複数の譲渡希望者から1枚ずつ戻ってきたチケットに対しても、まとめて座席を割り振ることが可能になる。

 「これまで『仕方がない』と諦めていたものでも、ITの力で解決できる領域はまだまだ多いはず。従来通りの座席指定券が適した場面ももちろんあるので否定せず、当日発券や顔認証を当たり前の選択肢の1つにしたい」(冨澤さん)

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