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2016年07月02日 21時39分 UPDATE

アダルトVRでアダルトCD-ROMの仇は討てるのか (1/2)

VRという新しいテクノロジーが切り開こうとしている「アダルト」は、20年以上前に「マルチメディア、CD-ROM」が通った道。この分野を最もよく知るジャーナリスト、納富廉邦氏がアダルトVRの問題点と可能性を探る。

[納富廉邦,ITmedia]

 新しいテクノロジーはアダルトによって普及する、という伝説がある。確かに、VHSビデオとレンタルビデオの普及はアダルトソフトが牽引したと言ってよいと思う。しかし、今やアダルトに、それだけの力はない。インターネットの普及と風俗の低価格化は、アダルトメディアへのアクセスをかつてないほどに安価に簡単にしてしまったからだ。

 もちろん、官能小説やアダルト系の写真集が、電子書籍の普及により以前より売れるようになるなど、アクセスの手段が増えたことで売り上げ増になるケースはある。しかし、それはアダルトに限った話ではないし、アダルトメディアが牽引しているわけでもない。

 去年あたりからじわじわと盛り上がりを見せ、ソニーのPlayStation 4向けにもHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が発売されるVRについてはどうだろう。使い道として簡単にアダルト利用を思いつく技術だけに、「こんなものが実現するのではないか」というユーザーサイドの期待は大きく、2016年6月12日に開催された「アダルトVRフェスタ01」は、その来場者の多さに途中で中止になったほど。

 ということで、まずは試してみないと話にならない。アダルトVR動画を配信している「Adult Festa VR」で配信されているいくつかのアダルトVR作品を見てみた。プレイヤーはiPhoneのアプリ「VR Player」と、段ボール製簡易型VR HMDのハコスコの組み合わせ。音声はイヤフォン(kripsch「X10」)で聴くことにした。とりあえず、現在、iPhoneで最も手軽にアダルトVRが試せるのは、この組み合わせのようだ。

photo 視聴したOFFICE K'sのVRコンテンツ
photo 「Adult Festa VR」のコンテンツはOculus Rift CV1でも体験可能

 見てみると、確かに想像以上に面白い。ハコスコ程度でもHMDの没入感は充分だし、顔が近づいてくる感覚は3Dよりも、もう少しリアリティがあった。何より、従来のアダルトコンテンツと違うのは、こちらの視線が自由になることだ。つまり、女性に跨がられている状態で下を見ると結合部近辺が、上を見ると揺れる下乳が見えるのだ。そして、そのためのインタフェースは、目を動かすだけ。もちろんよそ見だってできる。

 エロいかと言われると、実写AVと比べた時、あきらかにVRが上とは言えないと思った。その大きな要因は、VRによるリアリティを大事にしているが故の、女の子との距離感。要するに、自分の顔から、股間に顔を埋める女の子までの距離が遠いのだ。これがカメラならズームアップすればいい。しかし、そこはバーチャルとは言えリアルな空間。視線は動かせても目にズーム機能は付いていないのだ。そして、もしズームが出来たとして、それはもうVRではなくなってしまう。

 その代わり、こちらに顔を寄せてくる時の、揺れながら近づいてくるおっぱいのリアリティと、そこに目を奪われている間にすぐ近くまで来ている顔の、明らかにプライバシーゾーンを突破してくる近さは、妙に興奮するものがある。そこに肉体がないからこそ、よりエロを感じるのかもしれない。今までに感じたことがない映像と知覚のリンク。もっとも、VRであるが故に近づき過ぎると何も見えなくなるし、ゴーグルの先に画面がある以上、どれだけ近づいても、その距離は埋められない。

 そして、結局は視界の中でしかない世界は、案外小さいというか、ある程度スケール感を縮小しないと、常に女の子の一部分しか見られないわけで、だから、女の子が小さいのだ。これは、多分、まだVRを使ったコンテンツの演出や撮影方法が確立していないという面もある。

アダルトビデオメーカーの技術とアイデア

 かつて、バーチャルリアリティの旗印の下に作られた膨大なアダルトコンテンツがあった。まだ世間がインターネットに繋がっていないどころか、DVDさえも普及する前、1980年代の終りから1996年くらいまでの、ほんの僅かな間に起こったパソコンによる「マルチメディア」コンテンツのブームの時代に作られたいわゆる「アダルトCD-ROM」だ。

 そして、マルチメディアコンテンツの中にあって。マルチメディアというメディアの特性を最も生かした技術とアイデアでコンテンツを作っていたのは、アダルトビデオメーカーだったのだ。

 確かに、VRのような視覚的なリアリティはなかった。どころか、パソコン上で動画を扱う技術さえ発展途上だったため、画質は悪く、画面は小さく、CGの技術も確立せず、CD-ROMの読み込みまで遅いのだから、エンターテインメントタイトルとしては、ダメダメだった。だから、それほど一般に売れることもなかった。第一、パソコン自体、ろくに普及していなかったのだ。しかし、そこで作られていた「バーチャル未亡人」「バーチャルデート」といったタイトルは、何だか、とてもエロいものだったのだ。

photo バーチャル未亡人
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