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ネットにつながる「IoTイノシシ罠」も 格安SIMでアイデア実現、盛り上がる開発者たち(3/3 ページ)

» 2016年09月01日 08時00分 公開
[本宮学ITmedia]
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 モノとネットを接続するIoTのサービスでは、その接続手段として何らかの通信機能が必要となる。Wi-Fiを用いる場合も多いが、屋外や移動するモノでは難しい。スマートフォンとのBluetooth接続やテザリングを用いる手もあるが、利用者にある程度のリテラシーが求められる。そこでモバイルデータ通信が注目されているものの、法人契約に至るまでのハードルが高いという。

photo ソラコムの玉川社長

 「実はわれわれも会社設立後、社員の1人が携帯電話を法人契約しにショップに行ったら『社長が来てくれ』と呼び出されたことがある。きちんとした会社かどうかの与信審査のためだ。でも、そのSIMカードをIoT機器で使うとなると、いったい何百枚必要なのかと。料金設定も相対契約(通信事業者と企業が特別に取り決める契約)のような形が多く、とてもカジュアルに始められる話ではないと分かった」(玉川社長)

 そこでSORACOM Airでは、スタートアップのような小規模法人がWeb上で簡単にSIMカード発行を申し込める簡単さと、IoTに合う料金体系にこだわった。「SORACOM Airは誰でも月300円程度から手軽に始められる。それがいろんなユースケースにつながっている」。

「持たざる者でも使える」通信サービスを目指して

 玉川社長はもともと、Amazon Web Services(AWS)の日本法人でエバンジェリストとして働いていた経験を持つ。Soracom SIMの価格の裏側には、AWS時代に培ったノウハウが込められているという。

 例えば、従来のMVNO事業者が高価な専用機器で行っていたパケット交換、帯域制御、顧客管理、課金などの仕組みは、ソフトウェアで代替。基地局はNTTドコモのものを用い、残りの部分はAWS上に展開したソフトでまかなっている。これでコストを削減しているほか、Web上の管理画面からSIMカード1枚ごとの通信状況を確認したり、通信速度を変更したりできるようになっている。

photo 管理コンソールでSIMカード1枚ごとの利用状況を確認・変更できる

 「かつて個人開発者やスタートアップなどの小規模組織がWebサービスを始めたいときに、最も大変なのはサーバなどのインフラを用意することだった。自社で数千万円かけて調達するのが難しい状況を、クラウドが変えた。とりあえずサービスを作ってみて、ユーザーが増えた分だけ利用料も上がる。そんな『持たざる者でも始められる』というクラウドのコンセプトを、通信サービスでも実現したかった」と玉川社長は話す。

 サービス提供開始からしばらくたち、「さまざまなスタートアップから『こんな通信サービスがほしかった』と言われている」という。「クラウドも登場したばかりのころは“バズワード”と言われたが、いまや誰もそう言わなくなった。今のIoTは黎明期。IoTで何かを作りたい企業や人に向けて、質のいい“材料”を提供していければ」(玉川社長)。

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