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全寮制で“缶詰め”状態 東大受験専門「N塾」の狙いは──カドカワ川上社長に聞く(1/3 ページ)

» 2016年09月23日 19時24分 公開
[片渕陽平ITmedia]
photo 川上量生社長

 カドカワの通信制高校「N高等学校」(N高)に通う生徒向けに、今年4月に開かれた個別指導塾「N塾」。「最短1年で東大合格」を掲げ、塾生たちは全寮制の“缶詰め状態”で受験勉強を行う。

 15年12月にN塾の概要が発表されると、ネットでは「缶詰め状態なんて厳しすぎるのでは」「本当に成果が出るのか」などの声も上がっていた。開塾から半年経ち、N塾はどうなっているのか。「いやー……それが、非常に難しくて」――そう話すカドカワの川上量生社長に実態と狙いを聞いた。

定員30人に対し、入塾は7人 現在は5人だけに

 N高は、今年4月にカドカワが開校した通信制高校。時間や場所を問わずにネットで授業に参加できるのが特徴で、通学に時間がかからない分、通常科目以外の課外授業を取ったり、予備校に通ったりと、それぞれの生徒の進路に沿ったカリキュラムを組めるようになっている。

 プログラミングや文芸小説、アニメ、ゲームなど、さまざまなジャンルの課外授業を用意。その選択肢の1つが、東京大学を志す生徒だけを対象とした「N塾」だ。

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 N塾の生徒は名古屋市内の寮に入り、N高の通常授業に加え、東大受験に特化した個別指導を受ける。1日のスケジュールを見ると、ほとんどが勉強か睡眠ばかり。まさに“缶詰め”状態だ。塾長は『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者・坪田信貴さんが担当。坪田さんが運営する「坪田塾」の講師たちがマンツーマンで生徒を指導している。

photo 1日のスケジュールを見ると、ほとんどが勉強か睡眠

 外部の高校を中退してN高校に再入学した生徒であれば、高校卒業資格を最短1年で取得できるため、入塾後1年での東大合格も夢ではないという。だがその実態を聞いてみると「いや、全然、生徒が集まらなかった」。川上社長はそう話す。

 「これだけの環境を用意すれば入塾希望者は殺到だと思ったが、初年度の定員30人に対し、実際には50人しか申し込みがなかった。やはり寮に入ってまで勉強するというのは大きな決断が必要だったのでは」(川上社長)。入塾希望者には2月に筆記試験と面接を予定していたが、試験会場に現れたのはさらに減って50人中30人。「正直、東大に受かりそうな人は誰もいなかった」という。

 現れた30人は定員ちょうどだったが、全員を合格させるわけにもいかず、中学校レベルの算数ができるなどの最低条件を満たした上で、坪田さんの面接をパスした13人が合格した。面接では成績ではなく、真剣に受験勉強に打ち込む気力があるかをチェックしたという。「坪田先生は長年、決して優秀ではない子でも成績を伸ばしてきた。そのためには本人のやる気と性格のほうが重要だそうだ」。

 13人の合格者のうち、4月に入塾した生徒は7人。そこから半年で2人が退塾し、9月時点で残っている生徒は5人だけという。「そんなにきついふるい落としをしたつもりはなかったが、少数精鋭になってしまった」(川上社長)。

成績は……

 しかし、生徒の成績は劇的に上がっているという。

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