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全寮制で“缶詰め”状態 東大受験専門「N塾」の狙いは──カドカワ川上社長に聞く(3/3 ページ)

» 2016年09月23日 19時24分 公開
[片渕陽平ITmedia]
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「未来のエリートを育てたい」

 充実した設備や講師陣をそろえている一方、N塾の利用費は月6万円(受講費、寮費、食費、光熱費含む)と安価だ。N高自体の学費も、国が負担する「高等学校等就学支援金」の支給を受ければ3年間で29万3912円と、1年平均で10万円を切る(学費シミュレーションより)。ビジネス面では厳しい状況に見えるが、川上会長は、N高やN塾の取り組みに希望を感じているという。

 「ドワンゴはもともと社会に適合できない社員ばかりだった」――カドカワ傘下になったドワンゴの会長でもある川上社長は、N高とN塾のルーツをそう話す。川上社長によれば、ドワンゴでは、エンジニアの才能はあっても会話能力が低い“ダメな人間”も少なくなかったが、彼らが事業を成功させてきたという。

 「同じように、世の中にはいくら能力があっても周囲から“ダメ人間”と思われている子がたくさんいる。そういう子たちに正しい機会を与えたい」。たとえ才能があっても、テストの結果や偏差値から「君にはこの志望校は無理だ」と言われたり、金銭的な事情から塾などに通えなかったりする子どももいる。N高やN塾では、さまざまな課外授業や予備校を通じてチャンスを与え、「未来のエリートを育てたい」という。

photo 昨年12月の発表会で握手を交わす川上社長と塾長の坪田信貴さん

 川上社長は「現状の教育は”理想” を生徒に押しつけている」とも指摘する。「『努力次第で無限の可能性がある』と理想を話しても、生徒には届かない。大学受験に成功したり、きちんと就職したりといった“現実”をN高では提供する」。そのために手段を問わず「とりあえずこれだけやれば、少なくともこういう結果になる」と、結果が付いてくる道筋を生徒に示したいという。

 だが、子どもがどんなにN高に通いたいと思っても、実績のない高校への進学を保護者が許すとは限らない。川上社長は「分かりやすい方法のひとつとして東大合格者を出す。それも、東大に行く可能性が低かったであろう子が合格できれば、説得力がある」と意気込む。

 「N高によって救われる子は世の中にたくさんいるはず。ただ、世間の理解が邪魔をすると思うので、納得してもらえる結果を増やしていきたい」(川上社長)

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