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2017年06月22日 08時00分 UPDATE

「バベルの塔」がもう1枚!? タブーを超え実現した「クローン文化財」制作秘話 (1/3)

東京芸術大学がオランダとの共同研究で「バベルの塔」のクローンを制作。最先端テクノロジーと伝統技術のコラボで実現した。

[村田朱梨,ITmedia]

 旧約聖書に登場する「バベルの塔」。絵画において最も有名なのはおそらく、オランダの画家ブリューゲルの最高傑作とされる作品だろう。ボイマンス美術館所蔵のそれが今、24年ぶりに日本で展示されている。東京都美術館の「バベルの塔」展だ。

 そのバベルの塔はまぎれもない本物だが、実は日本で制作された“もう1つのバベルの塔”があるのをご存じだろうか。それは現在、同美術館から徒歩約3分の東京芸術大学「Study of BABEL」展で公開されている。

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 上がブリューゲルのバベルの塔。そして下が、日本生まれのもう1枚のバベルの塔だ。撮影条件が異なる2枚だが、実物を目にすると色や素材の質感まで、記者の目には全く同じもののように見えた。どういうことなのか。

 実は、日本生まれのバベルの塔は、ブリューゲルが描いたものの「クローン文化財」だ。

クローン文化財とは?

 クローン文化財はその名の通り、“クローン”のように元の個体と同質感・同素材を持つ作品のこと。制作した東京芸術大学COI拠点(文化共有研究グループ)によると、クローン文化財はただの精巧な複製画ではなく「最先端のデジタル技術と伝統的なアナログ技術の融合から生まれた新しい芸術」だという。

 複製画は元来、アナログな職人世界のもの。東京芸大も例外ではなく、長い間「人の手によらない芸術なんて」と、芸術家たちはデジタル技術の導入をタブー視してきたという。

 だが、人の手による複製やその技術の継承には膨大な時間と手間がかかる。その間にもオリジナルは刻々と劣化していってしまう。「正確さ」と「スピード」でアナログに勝るデジタル技術の導入は、オリジナルを守るためには必要不可欠だと東京芸大は判断した。

 アナログのよさを生かした、デジタル技術との融合。そうして生まれた「クローン文化財」の技法に興味を持ったのが、オランダの芸術科学保存協会「NICAS」(ニカス)だ。

 ブリューゲルのバベルの塔をはじめ、さまざまな名画を保有するオランダ。NICASでは、最新の3Dプリンタや高精細デジタルデータによる複製画制作を研究していたが、その技術をもってしても、デジタル技術だけで制作した複製画はどうにも「本物らしく」なかったのだという。

 「NICASのメンバーは、オリジナル作品が持つ透明感やニスの光沢を再現できずにいたそうです。最先端を行くはずの彼らは、むしろわれわれの複製技術に『本物らしさ』を見出してくれた」と東京芸大の制作グループは話す。

 そして今回、来日が決まっていたブリューゲルのバベルの塔を題材に選び、国を越えたクローン文化財の共同研究がスタートした。

photo NICASとの協定締結
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