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ロボット、AIに活路 世界に後れを取った日本女子バレーが「IT強者」になれた理由新連載・東京五輪へ連れてって(2/4 ページ)

» 2017年07月20日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

「日本のプライド」がIT導入の壁に

 10年のバレーボール世界選手権で、タブレット片手に選手へ指示を出す眞鍋政義監督(当時)の姿が印象に残っている人は多いだろう。

 渡辺さん自身も「2010年はブレークスルーの年。世界中から『マナベは一体何をやっていたんだ?』と問い合わせが殺到した」と振り返る。このころは監督だけでなく、選手やコーチも積極的にデータを活用し始めたタイミングでもあるという。

 しかし、2000年代初頭までは、日本は世界に後れを取っていた。

 17年現在、「世界トップレベルにおける女子バレーチームの約95%が使っている」のが「データバレー」というイタリア発の統計分析ソフトだ。選手やボールの位置情報、プレイ内容などを手入力し、試合データを収集・分析する。

データバレー 「データバレー2007」のセッター分析画面(データバレー公式サイトより)

 00年ごろにはすでにイタリアやアメリカなど欧米中心に世界で普及していたが、日本は導入に及び腰だった。その理由を「技術大国日本のプライドが邪魔をしたのでは」と渡辺さんは分析する。

 90年代〜00年代当時、日本国内のバレーボールトップリーグには、東芝、日立、パナソニック、日本電気(NEC)など大手コンピュータ企業を母体とするチームが多かった。「当時は、自分たちの方がいいものを作れるだろうという自負があったのでは。独自の国産システム開発は結局実現せず、03年頃にようやくデータバレー導入を検討し始めた」

 ただしデータバレー導入後も、すぐにデータ活用が進んだわけではない。渡辺さんが、日本バレーボール協会の専属アナリストになったのは06年。それまでもボランティアでデータ分析をしていたが、「海外チームには専属アナリストがいる一方で、日本は04年まで国際大会のたびにスタッフや機材が変わっていた」という。

 日本もデータを扱う専門家をつけるべきではないか──世界のトップチームに追い付くため、柳本晶一監督(03〜08年に日本女子代表監督を務める)の時代から、渡辺さんの挑戦は始まった。

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