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暮らしを変える「ブロックチェーン」

「VALU」やめました やめるのは、とても大変でした(6/6 ページ)

» 2017年08月04日 09時50分 公開
[岡田有花ITmedia]
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 むしろ、より大きなハードルになり得るのは(1)だ。今回、筆者のVALUを保有していたVALUerはみな優しい人で、筆者の求めに応じて、保有VALUを発行価格で売ってくれた。また、そもそも売れているVALUが「5VA」、VALUerが3人だけだったので、すべて買い戻すことがそれほど難しくなかった。

 売れたVALUが数十、数百になると、事情は変わってくる。VALUerにはさまざまな意図を持った人がいるため、「購入価格で発行者に売って下さい」と言っても売ってくれるとは限らない。筆者のVALUerは、筆者の“言い値”で買い戻しに応じてくれたが、もっと高い価格で買いとるよう言ってくるVALUerもいるかもしれない。VALUが発行時の価格より値上がりしている場合、買い戻しにも多くのお金が必要になる可能性もある。

 今思うと筆者が行った「発行価格で買い戻し」でも、VALUerに少し損をさせていた。他人のVALUの売買には価格の1%の手数料がかかるので、筆者のVALUerは、VALUを売る時・買うときにそれぞれ1%分(約17円×2=約34円)を負担していたはずだ。その分ぐらいは上乗せして買い戻すべきだった……。

 また、買い戻しを諦め、VALUを発行したまま退会する手もある。VALUの規約では、退会時のVALUの買い戻しを義務にはしていない。ただ、買い戻さずにやめてしまうと、有料で買ってもらったVALUが「0円」、無価値になってしまう。発行者を信じ、「あなたを応援したい」とVALUを買ってくれた人に、丸損させることになる。発行者の信頼は、かなり傷つくのではないだろうか。

筆者にはVALUが向いていなかった

 筆者はVALUをすべて買い戻したおかげで、心のおもりが1つ取れた。VALUerへの責任を感じながら生きるにはキャパシティが小さく、優待や特別サービスを提供する余裕もなかった。かといって「責任など一切ない」ように振る舞うのも、小心者の筆者にはできなかった。

 何を返すあてもなく、見知らぬ人とのお金のやりとりに慣れていない筆者のような人間にとってVALUは、「お金はもらえるけど、心が重くなる」サービスだった。そういった人が安易にVALUを発行するのは、ただ重荷が増えるだけなのでおすすめしない。

 「お金を使って挑戦したいことがあり、支援者に還元できる」「面白い優待を思いついた」――そんな人は、VALUを発行するといいと思う。オンラインサロンを運営していたり、有料コンテンツを配信しているなど、ネットで不特定多数に有料サービスを提供している人とVALUは相性がいいのではないだろうか。

 ルールが整備されている株式市場と違い、VALUはルール未整備のカオスだ。“上場審査”は緩いし、VALUの価格つり上げ行為などを規制する法律もない。「VALUのやめ方」もある意味、VALU発行者の自由だし、VALUerに還元するもしないも自由だ。

 そのため、VALU購入は、投資としてのリスクも大きい。購入したVALUの発行者が、資金を“持ち逃げ”してVALUをやめたり、飽きてしまって優待を返さなくなるかもしれない。発行者が何らかの事情でVALUにアクセスしなくなったり、不慮の事故などで亡くなるかもしれない。VALU運営元が倒産する……なんてことも、ないとはいえない。

 リスクは考え始めればきりがない。それでも「面白い」と思う人は参加すればいいし、「怖い」と思うなら、思いとどまったほうがいいだろう。

 筆者は「VALUをやめた」と書いたが、退会申し込みはまだしていない。VALUの売り出しをやめ、発行済みVALUをすべて買い戻し、購入VALUも1つもないため、アカウントは休眠状態、実質的にやめた状態ではある。ただ今後、何かいい使い方が思いつけば、再開することもある……かもしれない。

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