初音ミクなどのVOCALOIDが、弾いた通りに歌ってくれる「ボーカロイドキーボード」。前半の開発秘話に続き、今回は演奏動画や体験者の感想、どんな風に使われるのかなど、ボーカロイドキーボードとVOCALOIDのこれからについてお届けします。
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初音ミクの発売から10年。VOCALOIDは「歌ってくれるもの」から進化し、演者として舞台に立つこともあれば、道案内をすることもある。多様化するVOCALOIDの世界に、ボーカロイドキーボードはどんな変化をもたらすのか。
濱野:開発しながら考えていたのは、使う人とシーンが広がること。ボーカロイドキーボードはPCで曲をアップしたり流したりするよりもずっとリアルタイム性があるので、カラオケやバンドなどでの利用も考えています。
藤原:ボカロで挫折した方にも気軽に使ってもらいたいと思って開発してきました。「誰にでもできるもの」ではなかったVOCALOIDを、より多くの人に楽しんでもらいたいですね。
ヤマハとしては「もうみんなVOCALOIDを知っている」と思いたいのですが、全然そんなことはないんです。
――そうなんですか?
藤原:10人に聞いて5人も知っていれば御の字かなと。
――カゲプロ(※)人気や「ボカロで覚える参考書」のヒットなど、若い層にもVOCALOIDは広がっているようですが……
(※カゲプロ:じん(自然の敵P)が手がけるマルチプロジェクト「カゲロウプロジェクト」の略称。2011年からニコニコ動画で連作として投稿した楽曲を中心に、小説や漫画、テレビアニメなど、さまざまなメディアに展開し、人気を博した)
梅津:そうですね。15〜25歳のカラオケランキングでは100〜150位に10〜20曲ほどボカロ曲が入っていますし、初音ミク発売時小学生だったくらいの人たちはもう「当たり前にボカロ曲を聞く層」になっている。そうやって「一般化したボカロ」に触れている人はたくさんいて、それが「ボカロを知っている」の体感だと思いますが、VOCALOIDそのものについてしっかりと知っている人は、我々が思っているよりずっと少ないんです。
もし全国にいるボカロPが100人だとしたら、ボカロ曲を聞く人は1万人以上。でもその1万人以上の人にとってVOCALOIDは、曲を作って調教して……というものではなく、日常生活にただボカロ曲があるだけなんです。
ボーカロイドキーボードはそこに「自分にもVOCALOIDができるかもしれない」という気持ち――これまでなかった「初めての楽しみ」を作る可能性があります。実際ボーカロイドキーボードを紹介すると、そういう反応がとても多いです。
――「VOCALOIDを自分が使うこと」自体が、ライト層にとっては“新しい”
梅津:そうですね。あと僕らは楽器屋なので、社内ではどうしても「楽器」としてボーカロイドキ―ボードを捉えてしまいますが、これはもっと文化的な存在だと考えています。「表現の仕方が広がるもの」であり、その手段として鍵盤があると考えてもらうといいかもしれません。
――なるほど。ボーカロイドキーボードにも、VOCALOIDが発展してきたニコニコ動画などの「ユーザー自身で使い方や楽しみを生み出していく文化」がマッチするかもしれませんね
藤原:その文化に乗っかるというか、そこで楽しみを見いだしてもらいたいですね。我々が想像している以上のことが出てくると思います。
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