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で、ぼくらはいつ自動運転車に乗れるんですか? 研究歴20年、金沢大学 菅沼准教授に聞く(3/7 ページ)

» 2018年02月02日 13時34分 公開
[本宮学ITmedia]

菅沼准教授


 大きな課題の1つは、周囲の状況を確認するセンサーの能力がまだまだ不足していることです。


 いまよく使われているセンサーって、検知できる範囲が100〜150メートルぐらいなんですよ。しかし、自動運転のクルマが時速60キロくらいで走っているとすると、1秒で16〜17メートルくらい進む。対向車両も時速60キロくらいだとすると、相対的な車速は約120キロ。つまり1秒間で30〜40メートルくらい近づく計算になります。

 そう考えたときに、センサーが100〜150メートル先まで検知できていても、時間的には2秒とか3秒くらいの余裕しかなくて。その段階で検知できても、ぶつかってしまいますよね。

――ステアリングを切ってもブレーキを踏んでも、もう間に合わない。


菅沼准教授


 そうです。だから本当に安心して乗れる自動運転車を考えると、100メートルとか150メートルでは全然足りなくて、200〜300メートル先を見なくてはいけないんですが、そんなリッチなセンサーが安く普通に手に入るかというと、まだまだ課題があります。


 AIの高度化とかそういうことを考える前に、1つ1つのセンサーの能力をもっと高めないと、そもそもの情報がないので。

――そもそもデータを受信できていないと、どれだけ頭がよくなってもやりようがない。


菅沼准教授


 そう、やりようがないんです。


――いま実験などで使われているセンサーは、だいたい100〜150メートル先まで検知できるのものが主流なのですか。


菅沼准教授


 いろいろなタイプのものがありますが、レーザー光線を使うものは100メートル先くらいまで見えていて、電波を使うミリ波レーダーだと150メートル強くらいですかね。


photo 金沢大学の研究用車で使っているレーザー型センサー(赤枠部分)。左右2つの白いものはGPSユニット

――もし、ものすごくお金をかけて、世界中からよりよいセンサーを集めたとしたら、それで検知範囲は何メートルくらいになるのでしょうか。


菅沼准教授


 現時点では、だいたい200メートル先くらいがだいたい視野に入ってきている段階ですね。次世代型になると、ようやく250とか300メートル先を検知できるものが出てくるかも、という感じです。


――今のセンサーと次世代型は何が違うんですか?


菅沼准教授


 レーザー光線を例にとると、要は対象物に光を当てて、戻ってきた光を捉えることで距離を測ったりしているわけです。しかし、あまり強いレーザー光線を出してしまうと人間の目もやられてしまう。


 ところが人間の目に感じない赤外領域の光などであれば、出力をより大きくでき、もっと遠くまで測れるようになる。そういった研究が行われているとは聞いています。

 同じようにミリ波レーダーも、分解能を高くすることが検討されています。いまのミリ波レーダーはレーザーよりも少し遠くのものがぼんやりと見える程度ですが、それがもう少しよくなると聞いています。

photophoto 金沢大学の自動運転車ではレーザーに加えて、前方と側面にミリ波レーダーを搭載している

――最近、一般のクルマにも運転支援システムといった形で、渋滞中に前のクルマを追随してくれるような機能が搭載されています。それと今の話のような自動運転車は全く違うものなのでしょうか。


菅沼准教授


 個人的に一番の違いは意思があるかどうかだと思っています。目的地まで最終的につれていってくれるのか、ただ単にいま走っている道をそのまま走ってくれるのかという違いですね。


 いま普通に売られているクルマの運転支援システムだと、高速道路から車線変更して合流したり分岐したりといった操作は結局人がやりますよね。

――なるほど。とはいえセンサーなどの技術は、自動運転車に応用できる部分もかなり大きいのではないですか?


菅沼准教授


 ええとですね……それがまた、かなりドラスティックに違っていて。


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