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で、ぼくらはいつ自動運転車に乗れるんですか? 研究歴20年、金沢大学 菅沼准教授に聞く(5/7 ページ)

» 2018年02月02日 13時34分 公開
[本宮学ITmedia]

菅沼准教授


 一般道で乗れるようになるのはだいたい2030年代後半ぐらいのイメージでしょうか。ステップとしては、おそらく徐々に高速道路から幹線道路に降りてきて、そこから道幅が狭い裏通りなども走れるような形になっていくと思います。


 その過程でおそらく課題になるのが、自動運転車用の地図を全国規模でどのように整備するかです。いま計画されている地図はかなりリッチなものが多く、全て整備すると相当コストがかかる。それに、整備後にどう更新していくかという課題もあります。まずは運用してみて、結果のフィードバックを繰り返してコストダウンを図っていかないと、全国展開は難しいのではないでしょうか。

 最近の自動車業界はグローバルで動いているので、「日本国内」を全国とはおそらく言わないでしょう。全世界をターゲットとすると、高速道路での実用化から2〜3年ほどでは厳しくて、10年から15年はかかるのではないでしょうか。そう考えると2030年代後半くらいがだいたいのイメージかなと思っています。

――自動運転車用の地図のことを考えると、特定エリアだけで使えるものからスタートしそうですね。


菅沼准教授


 むしろ最初はそれしかやりようがないと思います。地図の話もそうですし、技術的な課題もそうです。例えば地域によっては冬場に雪がたくさん積もったりするので対応が難しい。都内などであれば冬でも雪や雨がさほど多くないので、そういうところのほうがスタートしやすいかもしれません。


――携帯電話が登場したときも、特定のエリアだけで使えたりしましたよね。そういうイメージに近いかもしれないですね。


菅沼准教授


 ああ、近いかもしれないですね!


――携帯電話の場合は都市部からでしたが、自動運転車にとって都市部は複雑で難しそうな気もします。むしろ地方から始まる可能性もあるのでしょうか。


菅沼准教授


 それは少し見積もりが難しいと思っています。日本国内の都市部って、私が20年くらい研究してきた経験上、交通量の多さという難しさはありますが、ドライバーの皆さんが道の流れを乱さないようにきちんと動いてるんですよね。


 一方、交通量が少ない田舎などでは、イレギュラーな行動をされるかたも散発的にいらっしゃる。自動運転車が考えなくてはいけない「ルール」でいうと、頻度は少ないものの、実は田舎のほうが難しいのではないかと私は思っていますね。

――私も地方出身ですが、けっこう激しい運転をする人もいますしね。歩行者も横断歩道がないところをピューっと渡ったり。そう考えると、交通ルールが比較的守られやすい都市部のほうが、ある意味システマティックで、機械にとっても考えやすい可能性はありますね。


菅沼准教授


 可能性はありますね。ただその分コンピュータの処理能力が高くないといけない難しさもあるのですが。結局、都会と田舎で「ルール」と「頻度」が違うだけで、総合すると難しさはあまり変わらない可能性もあります。


――では現時点でどちらのほうが早く、というのは言い切れないですね。


菅沼准教授


 そうですね。ただ、どちらがビジネスモデルとして成り立ちやすいかもポイントになると考えています。


 最近だと「MaaS」(Mobility as a Service:モビリティーのサービス化)という言葉をよく聞きますが、サービスの手段の1つとしてクルマを捉えると、ある地域で何らかのサービスを展開するために自動運転車を取り入れる可能性もあります。そのサービスのビジネスモデルが成り立ちやすいのが地方なのか都市部なのか、その差も導入時期に影響するでしょうね。

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