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コインチェックをマネックスが買収した5つの理由

» 2018年06月19日 20時19分 公開
[井上輝一ITmedia]

 「マネックスがコインチェックを買収した理由は5つある」――マネックスグループの松本大社長は6月19日、デジタルガレージが主催する「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2018 TOKYO」で、マネックスグループが仮想通貨事業に参入する理由を話した。

マネックスグループの松本大社長

 松本社長が挙げる、コインチェックを買収した理由は、(1)仮想通貨は世界中でトレードされており、ボラティリティーも高いためトレーディング対象として魅力的、(2)仮想通貨の時価総額は40〜50兆円ほどあるため、新たな資産クラスとして良い、(3)国際間送金などペイメントの手段になる、(4)ビジネスとして収益性が高いので利益が上げられる、(5)これからイノベーション起きるから――の5つ。この中でも最後の「イノベーション」が最も大切だという。

 「今の仮想通貨業界では、1980年代のデリバティブに関わっていたトレーダーや投資家、学者、弁護士、会計士といった大勢のプレイヤーたちの名前を聞く。当時と同じことが起きている」と松本社長は語る。

 松本社長は、87年に米Salomon Brothersに入社し、先物取引やオプション取引といったデリバティブに携わっていた。「当時、ドイツやフランスでは先の日付の取引は賭博だとする規制があり、規制の中でデリバティブという金融商品をどう扱うかを世界中から集まったトレーダーや投資家、学者などのプレイヤーたちが活発に議論した」(松本社長)

 集まった世界中の優秀なプレイヤーたちのアイデアがまとまることで、イノベーションが起き、最終的には規制自体を変えることにもつながったと振り返る。

 松本社長は「仮想通貨の世界は、完全にグローバルなマーケット。優秀な学者や欲深いトレーダー、あるいは悪い人も含めて世界中からそういう人たちが集まってくる。そういった人たちがギリギリの競い合いをすることでイノベーションが生まれる」と、自身のデリバティブの経験から予測する。

 「そのイノベーションが起きるのは、先ほど言ったトレーディングや資産クラス、決済手段とは違うところかもしれない」と予測しきれない部分もあるとした上で、「仮想通貨に関わっていなければその果実を手にすることもできない。(そんなイノベーションが起こりうる)グローバルかつ最先端な事業だから、仮想通貨は最もエキサイティングだと考えている」と仮想通貨事業への期待を語った。

 昨今の仮想通貨への規制状況について、松本社長は「コップに水が半分入っている」状態にたとえ、「半分しかないと考えるか、半分もあると見るか。『規制は敵』と考えず、できるだけポジティブに捉えるのがいいのではないか」と述べた。

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