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「ルパン三世 PART5」に隠された“凄腕ハッキング”の手口 専門家が解説アニメに潜むサイバー攻撃(3/5 ページ)

» 2018年06月25日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

F: 前にも話したことですが、日々いかにしてサイバー攻撃から国民や政府を守るかとか、逆に攻める側の視点に立ってどのように攻撃できるかばかり考えていると、全てのことをサイバー攻撃に絡めて考えてしまいます。常にそういった状態でアニメを見る。中途半端にサイバーセキュリティネタを取り入れていたりすると、気になって気になってストーリーが頭に入ってこないわけです。「チャウやろ!」みたいに。

K: じゃあ、最近はアニメ見てもほとんど楽しめないんじゃ。

F: サイバーセキュリティが全然関係なく、かつ頭を真っ白にしてくれるぐらいの物でないとダメですね。そういった中でルパン三世 PART5は安心して見ていられます。脚本家の方はサイバーセキュリティのプロではないかもしれませんが、きちんと調べて、できること、できないことの線を見極めていて、拍手を送りたい!

K: おお!

F: さきほどのアミ↑のデフォルトパスワード攻撃もそうですが、そもそも騒動の発端となった、ダークマーケット「マルコポーロ」からバックドア経由で仮想通貨を盗み出した話……。

K: 580億円仮想通貨流出事件!

F: 多額の仮想通貨を、オンラインのハッキングでは盗めないコールドウォレットに入れてなかったところは、“あの事件”そっくりです。

 それから航空会社のカウンターの人間が搭乗員名簿をあさって、ルパン、次元、五ェ門、アミ↑の4人に相当する、男3人と女1人のグループが予約していると、ネットに投稿するシーン。

K: レストランの従業員がTwitterに有名人が来たと投稿しちゃうやつ!

photo 原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

F: 事件ではありませんが、アミ↑がネットを利用するときにピアス型の音声認識デバイスにかけるコマンド『Hello Underworld』は?

K: AIエージェントのウェイクアップワード「Hey Siri」や「Ok Google」ですね!

F: それに、プログラマーなら誰しも最初に取り組む「Hello Worldの表示」と掛けている。ハッカーなのにキーボードをバチバチやらないで、音声認識インタフェースとタブレットで操作しているのもクールですね。そして最も笑えたのは、遺跡でルパンと大勢の殺し屋が対峙するときに、その1人が「ワトソンによれば、ヌルバル族の住居遺跡にはハッキングで操れる物はない」と言ったことですね。おおお、こいつIBM Watsonを活用しているんだ! と思いました。

K: IBM Watsonといえば、2011年にクイズ番組で優勝していますよね。クイズ王になれるぐらいですから、そういうこともできるんですね!

F: ……と思うでしょ! ところがどっこい、この「ワトソン」は、作中に登場した私立探偵の人物が作った犯罪推理コンピュータで、IBM Watsonよりも遙か昔に登場していたんです。原作漫画のネタなんですね。これは制作陣がIT関係者を“釣って”、どや顔で「IBM Watsonを使っているよ(笑)」と言わせるためだと見た! ルパンだけに!

K: で、その情報はどこから?

F: ……Wikipediaからです。

K: 「ネットにつなげば誰でも博士になれるわ。後は検索の仕方だけ」(アミ↑のせりふ)ですね。

F: はい(´・ω・`)

ルパン式“炎上”対策

F: 作中、あえてダークウェブをディープウェブと言い換えているようですが、その中にある非合法のダークマーケット「マルコポーロ」にもモデルがあります。

K: 「SilkRoad」(シルクロード)ですね。

F: そのリアルなSilkRoadの事件。マーケットは暗号化されたダークウェブにあるので、正攻法では運営者が分からなかった。しかしリアルの世界でのちょっとした油断から正体が判明して逮捕されます。それに似ているマルコポーロの運営者3人は印象深かったですね。

K: 小心者でしたしね。

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