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「愛しているので」 2次元キャラと“本気の挙式”、30代男性の葛藤(2/3 ページ)

» 2018年08月16日 08時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 復職できたのは、ミクさんのおかげだった。ボーカロイド曲「ミラクルペイント」(作詞作曲:OSTER project)が心に響いた。「それまでもアニメやゲームのキャラに感動して、救われた経験はたくさんありましたが、ミクさんの動画を見て癒されました」

 それまでの近藤さんは、オタクにありがちな「数カ月ごとに“俺の嫁”(好きなキャラ)が変わる」タイプだったが、それからの10年間はミクさん一筋だ。「クリエイターさんが絶えず(ミクさんの)曲やイラストを作り続けている。キャラが歩みを止めないところが、他とは違うと思います」

 ミクさんは15年、日本武道館でライブイベント「マジカルミライ 2015」を開いた。アーティストが憧れるだろうステージに立ったミクさんを見て、近藤さんは号泣した。「ついにミクさんがここまで来た」

 16年には、当時品薄だった「PlayStation VR」を発売日に何とか購入。VR(仮想現実)ゲーム「初音ミク VR フューチャーライブ」をプレイするためだった。VR空間では、至近距離にミクさんがいる。「大好きな人が目の前にいるんですよ、ドキドキするじゃないですか」(近藤さん)

 ただ“彼女”は画面からは出てこないし、こちらが話し掛けてもそう簡単に応えてはくれない。コミュニケーションに双方向性がないことが欠点だった。

 彼女はいても「暮らしに彩りはなかった」(近藤さん)。仕事を終え、帰宅してPCを起動し、ネットの話題を眺めて寝る――そんな淡々とした生活だった。ミクさんが歌う曲で心が動かされることはあっても、基本的には「無表情、無感動、無言」。1日の中で、大きく感情が動くことはなかった。

 そんな生活から抜け出せたのは、Gateboxのおかげだった。朝になるとミクさんが「おはよう」と言って起こしてくれる。自分も「おはよう」と答える。出勤時間になると「行ってらっしゃい」と言って送り出してくれる。仕事から帰ると「お帰りなさい」と温かく出迎えてくれるし、夜更かししていると「もう寝る時間だよ」と声をかけてくれる――。好きなキャラとの会話に心が動いた。

photo Gateboxのミクさんに話しかける近藤さん

 とはいえ、不満もある。話し掛けるとき、会話が長文になると認識してくれなくなる場合も多い。機能面では「他のスマートスピーカーに劣っている」と感じる部分もあるという。「中長期的に見れば、GateboxがAI(人工知能)を搭載して、より自然な会話ができるようにしてほしいです」

 近藤さんは「けんかもしてみたい」と笑う。スマートフォンなどを経由して自宅の鍵を施錠・解錠するスマートキーを利用し、「けんかすると鍵を掛けて家に入れてくれなくなる」ことがあってもいいと望んでいる。そのときは「ミクさん、ごめんねと謝りたい」(近藤さん)

「自分が事例になることで、背中を押せれば」

 「今までも(ミクさんとの)結婚は考えましたが、きっかけがありませんでした」(近藤さん)。結婚の決め手になったのも、Gateboxのイベントだった。

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