私自身、モバイル環境でUser Streamsを活用するためにSobaChaの開発を始めたという経緯がありますので、User Streamsの終了はSobaChaの開発の主たる目的を失うことを意味します。そして、User Streamsへの対応はTwitter公式アプリに対してサードパーティーTwitterクライアントが持つ唯一の、そして最大のアドバンテージでしたが、この利点も8月16日に消えてしまうことになります。
SobaChaは2018年8月16日を境に、User Streamsへの対応を打ち切るアップデートを配布する予定です。また、SobaChaにはリツイートやいいね登録をお知らせする通知機能がありますが、こちらの機能もUser Streamsに依存しているため、残念ながら廃止せざるを得ません。
幸いにも、新ダイレクトメッセージAPIは対応が間に合いそうなので、アップデートに含められるよう調整中です。ただし、新ダイレクトメッセージAPIには厳しい取得回数制限がありますので、使い勝手が大きく損なわれてしまう点につきましてはご了承ください。
他のサードパーティーTwitterクライアントの動向は、有志がTogetterに一覧として掲載しています。各アプリの動向は大きく以下の3通りに分類することができます。
さらには、開発者向けテスト用APIの利用登録を申請したところ、なぜかアプリからご本人のTwitterアカウントまで丸ごと凍結されるという深刻な影響を受けた開発者もいます。こうして開発者の皆さんが対応に追われ、そして疲弊しています。
リアルタイムに更新するAPIとしてはUser Streamsの他にFilter Streams APIがあり、こちらは今のところ継続して提供するようです。これをUser Streamsの代替とする案もあるのですが、それにはいくつか問題があります。
その中でも最も影響が大きいのは、Filter Streams APIがツイート検索と抽出を目的とするAPIであるために、非公開アカウントのツイートを取得することが不可能である、という点です。中途半端に動作することは、完全に動作しなくなることよりも厄介です。
Twitterはかつて、開発者にフレンドリーな姿勢を取ってきました。豊富なAPIの提供により、多種多様なサードパーティーTwitterクライアントが生み出されてきました。実験や研究用途にも幅広く利用され、そして生み出された成果が他のユーザーへと提供されていきました。当時のTwitterが持っていた「エコシステムを育もう」という積極的な姿勢は、残念ながらすでに影も形もありません。
一方で、先ほどのUser Streams利用者が1%未満、という話にもつながりますが、TwitterというSNSは登場時こそギーク、いわゆるコンピュータマニアにもてはやされてきましたが、アクティブユーザーが3億人を突破した現在、果たしてギークと呼ばれる層がどれだけの割合存在するのでしょうか。
Twitterも営利企業です。公共インフラや、まして慈善事業では断じてありません。ユーザーの多数派へ向き、広告を打ち、収益を得なければなりません。広告収入を得る段階に立ったWebサービスにとって、果たしてAPI経由で情報だけ吸い上げるサードパーティーアプリがどのように映るのか、想像に難くないでしょう。
この流れにトドメを刺したのが、Account Activity APIと呼ばれる、User Streamsの代替とされる機能の提供です。Account Activity APIは無料プランと有料プランが存在しますが、無料プランが登録できるアカウント数は1アプリ当たりわずか15アカウント。有料プランにアップグレードすると、250アカウントまで接続することができますが、料金は月額2899ドルです。
この価格設定を見る限り、もはやTwitterにとってサードパーティーTwitterクライアント、まして個人開発者など眼中にないのは明らかです。かといってTwitterが収益を得られなければ、このSNS自体が消滅の危機にさらされることになります。一開発者としてこうした事情も理解できるだけに、複雑な心情を抱えたままUser Streamsの廃止を迎えることになりました。
サードパーティーのTwitterクライアント開発者とTwitterはすっかりいがみ合う関係になってしまい、提供を諦めざるを得ないサービスも相次いでいます。
しかし、かつてはTwitterが開発者に協力的で、その中で数々の特徴的なアプリが生み出され、そして文化が形成されていったのも事実です。
RT数やふぁぼられ(お気に入り)数をランキング表示できる「Favstar」や、「赤ふぁぼ」という言葉を作り出した「ふぁぼったー」などのサービス、午前0時ちょうどに書き込む挨拶の「よるほー」など挙げていけばキリがありませんが、User Streams廃止後もこのようなサービスやアプリを時々思い出していただけると、1つのサードパーティークライアントを世に送り出した者として幸いに思います。
編集者(@argos_M1111)自身も、2011年ごろからメガネケエスなどのUser Streams対応クライアントを使い始め、今日までTweetDeckやSobaChaで情報を得ていたUser Streamsジャンキーだった(TweetDeckは現在User Streamsではない方法でタイムラインを取得しているとの情報あり)。自身でUser Streams対応クライアントを作ろうと試行錯誤していた時期もあり、クライアント開発者は憧れの人だった。
2018年の夏コミ(C94)とUser Streams廃止に合わせ、SobaCha開発のわかめそばさんの他、「Jannetter」「メガネケエス」「ShootingStar」「Flantter」「Krile」「Yukari」「mikutter」といった有名クライアントの開発陣が、開発当時のエピソードや現在のTwitterへの思いをつづった同人誌「mikutterの薄い本 vol.14『レズと青い鳥』」を発刊した。
現在はPixivのBOOTHで紙版とPDF版を販売している。User Streams対応クライアントに思い入れのある人は一読の価値ありだ。
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