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» 2018年09月25日 08時00分 公開

これからのAIの話をしよう(日本編):人工知能開発は「儲けないと意味がない」 東大・松尾豊さんが見た“絶望と希望” (1/4)

日本が人工知能開発で世界と戦う上で可能性のある分野や領域は。日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授に聞く。

[松本健太郎,ITmedia]

 日本企業は世界とどう戦っていけばいいのか。競争力を高める一手段として、人工知能(AI)開発に注目が集まっている。日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授は「シンプルに、日本企業が世界で大きなシェアを占める領域が何かを考え、そこにディープラーニングを組み合わせればいい」と話す。

 人工知能の研究、開発、ビジネスへの活用──何をする上でも、まずは企業がどうもうけるかを考えることから全てが始まるという。産学連携の重要性や、日本が人工知能開発で活躍できる分野、日本企業で働く人たちが個人レベルでできることなどを聞いた。

(聞き手:デコム松本健太郎)

(編集・構成:ITmedia村上)

企業がもうけないと意味がない

――日本は、人工知能開発への投資や支援という観点からも、米国や中国に遅れているといわれています(関連記事)。その問題はどう解決すればよいでしょうか。

松尾さん 日本国内におけるディープラーニング研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授

松尾さん まずは企業がもうけないと意味がないと思っています。

 企業がもうけて税金を納めることで、ようやく大学にもお金が回ってくる。もともと国ができることはそんなにないので、文句を言っても仕方がありません。大学側も、もっと企業の役に立つことを考えるといいと思います。

 そもそも、大学はなぜあるのか。僕は大きく2つの役割があると思っています。1つは、さまざまな分野の専門家がいるという価値。基本的には自分が信じたことをやり続けることにバリューがあります。経済的なインセンティブではなく、知的好奇心で動くプレイヤーは、他の人と異なる動きをすること自体に意義があります。そして、知的好奇心で動く研究の社会的な意義はとても大きい。ですから、競争的資金によって競争させるというのはそもそもはそぐわない。

 その上に、2つ目の産業的・社会的なバリューが築かれます。例えば、産業界が「△△という産業における知見を体系化する必要である」というときに、そうした知識を体系化し、先端の研究を行うということです。

 産業や社会の要請に対して、研究者は真摯に向き合う必要があると思います。競争的資金という仕組みもある程度必要ですし、さらに言えば、きちんと企業や産業の役に立つことでサポートしてもらうという、共同研究の体制作りも重要です。

 もし研究費として大きな予算が欲しいなら、産業界の役に立つことを考えなければいけないでしょう。

――GoogleやFacebookのように、自社で研究所や研究チームを抱え、その分野の第一人者たちが人工知能研究に取り組んでいるケースもあります。改めて、大学で学ぶべきことは何なのかと考えさせられます。

 先ほど産業界の役に立つことを考えるべきと言いましたが、資本主義の世界から見た「大学の基礎研究の在り方」はもう少し精緻に考える必要あります。僕は「一山越える」ことが大事だと思っています。しかし、「二山」「三山」超えた先にあるものを(少なくとも2つ目のバリューにおいて)やる必要があるのかというのは、もっと精緻に考えていいのかもしれません。

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