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「敵とは何か」 SNSの未来を描く「ガッチャマン クラウズ」のメッセージを解くアニメに潜むサイバー攻撃(2/7 ページ)

» 2018年10月12日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

F: ……。はじめちゃんは、ガッチャマンの神様のようなポジションにいる、J・J・ロビンソンという明治の博徒かつポエマーみたいなおっさんに、心を具現化した「NOTE」(※)を体の中から抜き出され、Gメンバーことガッチャマンになります。

photo 主人公の一ノ瀬はじめは、J・J・ロビンソンから「NOTE」を抜き出され、Gメンバーに加わる (c) タツノコプロ / ガッチャマン クラウズ製作委員会

(※)NOTE……持ち主の心が実体化した、手帳のような物体。ガッチャマンが装着するスーツの力の源になる。

K: 博徒? ポエマー?

F: 何気に文字化しにくくキャラが濃いんですよ。主人公を含めて。

K: な、なるほど。

F: このストーリーの主人公にしてかなり特異なキャラクターであるはじめちゃんの話は後にしまして、まずはガッチャマン クラウズの1つのキーワードである、新世代のSNS「GALAX」のお話です。GALAXは、天才かつ人前に出るときはかわいい女の子の服を着るのがポリシーの美少年、るいるいこと爾乃美家累(にのみや・るい)君が作り、「総裁X」という対話型AIがマネジメントを行っています。規模感のイメージは「LINE」に近いですね。

photo るいるいこと爾乃美家累(にのみや・るい)(c) タツノコプロ / ガッチャマン クラウズ製作委員会

K: GALAXは海外にも進出していましたね。

F: そうそう。そういう意味でもLINEぐらいです。このGALAXのユーザーを通称「ギャラクター」といいます。総裁X、ギャラクター、この辺りで旧作を知っている人は、悪の組織のSNSかと思うかもしれませんが、Xは善良で優秀なAIですし、ギャラクターも基本は一般ユーザーです。言い切ってしまえば、いい意味でも悪い意味でも、敵でも味方でもない、社会インフラです。

 といいますか、ここで敵味方の話をする以前に、私たちは物語を通して「何が敵か?」「敵とは何か?」というテーマを投げ掛けられます。これがキーポイントの1つ。

K: 総裁Xはとろけてしまうほどの甘々ボイス(CV:丹下桜さん)でしたが、人間のような形は持たず、画面上に波形や雲、放電のタイムラプスみたいにして描かれていましたね。

photo 爾乃美家累(にのみや・るい)が開発したAI「総裁X」 (c) タツノコプロ / ガッチャマン クラウズ製作委員会

F: そこが第2のポイント。私たちはこの作品のタイトルでもある「クラウズって何?」という答え探しもすることになります。たぶんクラウズの1つは、このXが姿を持たない存在ということもあると思います。単にクラウドコンピューティングという意味ではなく、姿を持たぬが意思を持つものというところでしょうか。当然、その対比として姿を持つが意志を持たぬ者もいるのですが。

 さて、GALAXの世界では、音声入力と「アメーバピグ」のようなアバターを使ってコミュニケーションを行います。そのかわいさもさることながら、現実世界とのリンク、ユーザー同士をマッチングするシステムがすさまじい力を発揮します。

photo GALAXの画面 (c) タツノコプロ / ガッチャマン クラウズ製作委員会

 例えば、目の前でけがをした人がいれば、GALAXのアプリに「けがをしている人がいる」と話し掛けると、Xから「大丈夫、落ち着いてください。まわりに救急対応の資格を持ったギャラクターがいます」というように返答があり、数秒後には「私、資格持っていまーす。任せてくださーい」といって看護師が走ってきます。ご近所さんの騒音に悩んでいる子連れのお母さんには、「お手伝いしますよ」と弁護士がマッチングされたりもします。

K: 「救急車いらないんじゃね。GALAXの方が全然役に立つよ」なんていわれちゃってましたね。

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