ITmedia NEWS > ネットの話題 >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

「敵とは何か」 SNSの未来を描く「ガッチャマン クラウズ」のメッセージを解くアニメに潜むサイバー攻撃(3/7 ページ)

» 2018年10月12日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

F: 公務員として耳が痛いところではありますが、プライバシーですとか細かいことは抜きにすると、SNSの未来、あるいは国が作るべき国民保護システムの理想を具現化していて、見た瞬間、思い切り頭を殴られたような気がしました。さらにGALAXの広告のキャッチコピーが「世界をアップデートさせるのはヒーローじゃない、僕らだ。」というのも、災害時に例えるなら「自助、共助、公助」の自助・共助に当たります。自助や共助はこういったインフラがあればより機動的になるんだろうな、とも思わせられました。

K: 災害時のSNS活用は、容易に想像できますね。劇中でもそんなシーンがありましたし。

F: 少なくとも、プライバシーよりも人命が優先される、緊急避難のようなシチュエーションでは許されるはずですから、プライバシーに配慮しつつこういったシステムを組み立てれば、きっと役に立つはずです。

 こういったシステムはインセンティブ、つまり報酬がシステムの永続性を確保する上では重要なのです。GALAXでは何らかの人助け(ミッション)を達成するとポイントがもらえる仕組みになっています。おそらくポイントを使ってユーザーに利益が還元されるのでしょう。見たくもない広告をのべつ幕無しに見せられて「お金を払うから広告を止めてくれ」と思わせるより、出稿企業はこうしたポイントに応じて商品をプレゼントするとかにシフトすれば、社会貢献のスタンスを示せて好感度も上がり、ユーザーも喜ぶという、皆がハッピーなSNSが作れると……。

K: (光速でFの口を押さえて)それ以上言っちゃダメぇー! 営業部が来るー!

F: むぐぐぐg……。

忍び寄る力を得たが故のヒロイズムと利己主義

F: GALAXを作ったるいるいは、ベルク・カッツェという宇宙人に、特殊な能力を顕現するためガッチャマンと似たようなNOTEを抜かれています。

 カッツェさんは、ネットスラング全開、2ちゃんねらー風トークにしてめちゃめちゃ滑舌の良い宇宙人、えー、言葉で説明しても姿が思い浮かばないと思いますが……。そういった雰囲気の方です。

 そして、るいるいは、こう何というか、青いLED電球の頭部がモニターになっていて、手足が生えたような「クラウズ」というアバターを使ったり、クラウズを他人に与えたりする能力に目覚めています。言っていることがよく分からないと思いますが、私も文字で表現することの限界を感じます。困ったら作品を見ましょう。

K: 大丈夫です。写真をお借りしてきました。こちらになります。

photo 生身の人間では対処できない事件や事故でも、遠隔ロボットのように操作できる「クラウズ」 (c) タツノコプロ / ガッチャマン クラウズ製作委員会

F: すごく、LED電球(手足付き)です……。るいるいは「世界をアップデートしたい」という思想に共感する100人のギャラクターを選び出し、このクラウズを与えます。これを通称「HUNDRED」と呼びます。HUNDREDは、生身の人間では対処できない事件や事故が発生したとき、クラウズの姿で遠隔地から出動して解決に当たるわけです。ただ、るいるいは思想を共有する仲間と思ってクラウズを与えたのに、HUNDERDの一部はだんだん「選ばれた人間である」という思想を持ち始め、るいるいと対立するようになります。

K: ロープウェイの事故やトンネル崩落事故とか、いい感じの活躍があったんですけどね。

F: そういったシーンで活躍するごとに「もっと活躍させろ」という、利他の奉仕から利己のヒロイズムへのシフトが起こるわけです。自分の大きさを勘違いすることは世の常ですね。さらに、これはおそらくですが、るいるいはHUNDREDと直接会ったことがありません。ネットを通じて知り合った人を、実際に会わないまま「信用したら、実は自分が思ったような人ではなかった」とか「仕事をしたら、問題が発生した」という、ネット経由のトラブルの典型に思えました。

K: 確かに。反るいるいのリーダーになった梅田さんも、おそらく最初はるいるいに共感するような雰囲気だったんでしょうかね。

F: るいるいは梅田さんに悲痛な訴えをして説得を試みますが、功を奏しません。結局るいるいは梅田さん、そして同じような傾向のHUNDREDをXに調べさせて、まとめてアカウントを削除、クラウズとHUNDREDの活動も凍結させてしまいます。SNS上で議論するもかみ合わず、最後はブロックしてしまう、というように。「なぜ人間は匿名での付き合いや、顔を会わさずに話すと、いがみ合うんだろうな」とか「実際に会ってみて判断するか、会わないならうかつに信用してはならないということを、心の中に刻んで付き合えばよいのに」と思いました。まあ、それだけるいるいが純粋なんだな、と若い頃の自分を見るような気がしました。

K: Fさんの若い頃って、名うての“狂犬ライター”で、数々の雑誌を滅ぼした、むしろベルク・カッツェ……。

F: 腹からNOTE抜くぞ! ゴルァ!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.