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コラム
» 2018年10月11日 08時00分 公開

クアルコムの新技術「aptX Adaptive」とは? 「いい音」と「途切れない」の両立

米Qualcomm(クアルコム)のaptXファミリーに新しく「aptX Adaptive」が加わった。データ転送時のビットレートを可変させながら伝送する技術で、音の途切れやノイズを抑えることができる。

[山本敦,ITmedia]
aptX Adaptiveのロゴ

 aptXは、米Qualcomm(クアルコム)が開発したBluetoothのA2DP(オーディオ用プロファイル)に対応するオーディオコーデックだ。A2DPの必須コーデックであるSBCに比べ、より圧縮効率が高く、ベターな音質と低遅延が特徴となっている。そのaptXに新しく「aptX Adaptive」が加わった。

 aptXには複数の技術がある。aptXは、CD品質の44.1kHz/16bitまでの信号を通すことができるが、その上位の高音質コーデックとして48kHz/24bitまで対応する「aptX HD」があり、一方でワイヤレス伝送時の遅延発生を抑える「aptX LL」(Low Latency)という技術もある。これらと並べた時、区別しやすいように従来のaptXを「aptX classic」と呼ぶこともある。

クアルコムがリリースしている既存のオーディオコーデックであるaptX classic、aptX HD、aptX LLそれぞれの特徴

 これらの“aptXシリーズ”のコーデックに新しく加わるaptX Adaptiveは、データ転送時のビットレートを可変させながら伝送する技術だ。従来のaptXではビットレートが352kbps/384kbpsに固定されていたため、通信が混雑する場所や時間帯など環境によっては音の途切れやノイズが発生する場合があったが、aptX Adaptiveではリスニング環境の電波状況やデータ量に応じて転送ビットレートを280kbpsから420kbpsの間で可変させることで、安定して遅延の少ないオーディオリスニング環境が実現できる。初期スペックでは最大48kHz/24bitまでの信号を伝送可能だ。

クアルコムの新しいオーディオコーデック「aptX Adaptive」の解説。データ転送時のビットレートを可変させながら伝送することによって安定性を高められるところに大きな特徴がある

 遅延性能については、クアルコム「Snapdragon」シリーズの最新SoCに組み込んだ場合、aptXが70〜80ミリ秒前後に対してaptX Adaptiveは50〜60ミリ秒前後。一方でaptX LLは40ミリ秒と低遅延性能ではさらに優秀であるもののビットレートは固定。クアルコムでは今後、スマートフォンやポータブルオーディオプレーヤーなどモバイル端末に向けてaptX Adaptiveの採用を促していく方針だ。

 aptX Adaptiveのメリットを享受するためには、送り出し側・受け側の機器がどちらも対応している必要がある。クアルコムでは今年の9月に技術の正式発表を行ったばかりだが、aptX Adaptiveに対応する製品はいつ頃登場するのだろうか。

48kHz/24bitまでのオーディオ信号を伝送可能

 現在、受け側のデバイスに搭載されるデコーダーについては、クアルコムがイヤフォンやヘッドフォン向けに提供している「QCC5100」、ワイヤレススピーカー向けには「CSRA68100」という2つのプラットフォームがある。これに少し遅れるかたちで、モバイル端末向けのエンコーダーがAndroid 9.0 Pie向けに提供を開始する。その時期は2018年12月ごろとされている。

 これらのクアルコムから提供されるソリューションを組み込んだコンシューマー向けオーディオ機器は、早ければ2019年の2月末ごろにメーカーから商品発表のアナウンスがあり、同年春から初夏あたりに店頭に並ぶことになるだろう。

 aptX Adaptiveがユーザーのリスニング体験にもたらす変化にあまり派手さはなく、「最近ワイヤレスオーディオが途切れにくくなって、気持ちよく音楽が聴ける」というレベルだ。しかし、これはクアルコムが目論む「有線接続と同等のワイヤレスオーディオ体験」に向けた大事な一歩。aptX Adaptiveの恩恵に気付く人は少なくても、実はその「気付かない」こと自体がaptX Adaptiveの価値を証明することになりそうだ。

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