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小学校の「プログラミング教育」にはびこる誤解 教育の専門家「何を学ぶか考えて」

» 2018年10月19日 17時35分 公開
[村上万純ITmedia]
プログラミング 情報通信総合研究所の平井聡一郎さん(ICTリサーチ・コンサルティング部)

 「小学校のプログラミング教育必修化にはいろいろ誤解がある。大事なのは、プログラミング体験を通して何を学ぶかを考えることだ」――情報通信総合研究所の平井聡一郎さん(ICTリサーチ・コンサルティング部)は、子どものプログラミング教育についてこう話す。世界中で知育玩具を発売する米Spheroは10月19日、プレス向け説明会を開催。文部科学省のICT活用教育アドバイザーも務める平井さんが、子どものプログラミング教育の現状を説明した。

 平井さんは「これから日本は少子高齢化が深刻化し、今ある職業も人工知能やロボットに代替されていく」とし、「これからの時代にはコミュニケーション能力、創造力、課題解決力が大切になる」と説明する。

 しかし、現状の学校教育ではこれらの能力を育てることは難しいという。こうした問題を踏まえ、次期学習指導要領では小学校から高校でのプログラミング教育が必修化された。小学校では、技術そのものではなく、プログラミング体験を通して「プログラミング的思考」や自由な発想力などを総合的に学ぶことが目的だ。小学校は2020年、中学校は21年、高校は22年に完全実施される予定。

プログラミング 米Sphero製品
プログラミング
プログラミング

「小学生のプログラミング教育」への誤解

 「誤解されがちだが、小学生のうちはプログラミング自体を学ぶのではなく、プログラミングを通して各教科の理解を深めることが大切」と平井さんは強調する。中学校では技術・家庭科(技術分野)でプログラミングに関する知識を学び、高校では情報科でプログラミング、ネットワーク、データベースなどを網羅的に学習するとされているが、小学校は文字入力や基本的な操作を学びながら「プログラミング的思考」を育む。

プログラミング

 プログラミング的思考とは、各教科に共通するような(1)行動を分解する、(2)パターンを見つける、(3)大事なことに絞り込む、(4)手順で並べる、といった考え方だ。

 具体的に、子どもたちは各教科でどのようにプログラミング的思考を学んでいるのか。説明会では、床をコロコロ転がったり、光ったり、音を出したりできるスフィロの各製品と、直感的な操作でプログラミングができる専用アプリ「Sphero Edu」を活用した事例が紹介された。

プログラミング 日本の小学校の現場

 まずは、小学校6年生の算数で学ぶ「正多角形」の例。スフィロ製品を動かして図形を描かせたいとき、四角形なら「3回直角に曲がる」よう指示すればいいと分かるが、これが五角形や六角形ならどうか。平井さんは「プログラミングをするには、スフィロが曲がる角度と回数を考える必要がある。頭の中だけで考えるのと、実際にロボットが動くのでは子どもの興味も全然変わってくる」と話す。

 また、6年生の理科では「人の体のつくりと働き」を学ぶ。イラストで描かれた人体図の上にスフィロを置き、実際の血液の流れをプログラミングしてシミュレーションすることで、血液循環の仕組みを理解することが狙いだ。本体が光る「Sphero SPRK+」(スフィロ スパーク)を使うことで、動脈血を通るときは赤色、静脈血を通るときは青色になるようプログラミングすることもできる。

プログラミング プログラミングを通して血液循環の仕組みを学ぶ

 他にも、専用カバーを装着したスフィロ製品に絵の具を付けて絵を描いたり、複数のスフィロ製品を使って日食を表現したりなど、さまざまな使い方が紹介された。

プログラミング 図工にも使える

 平井さんは、ボール型のスフィロ製品を「頑丈かつシンプルな作りで、学校で使うのに向いている。何より見た目がかわいくて子どもによく受け入れられている」と評価する。

 「教育現場からは、何を教えていいか分からない、そもそも教え方が分からないといった声もある。しかし、今後の日本の将来を考えると、プログラミング教育は必ずやっていかなければならない」(平井さん)

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