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「AI開発ミステリー 〜そして誰も作らなかった〜」 とある大手製造業の怖いハナシマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/5 ページ)

» 2018年10月25日 08時00分 公開

第3章:請負の罪、下請けの闇

 外注という仕組みは、開発を依頼する側からすればとても楽です。難しいこと(今回はAI開発)を外部でやってくれますし、長年の付き合いで社内業務を把握しているSIerなら細かい要望も聞いてくれます。今回も依頼に合ったAIを開発してくれると思っているでしょう。

 では、大手SIerには社内にAIエンジニアがたくさんいるのでしょうか? しかしながら人数は限られますし、他のプロジェクトも担当しているはずです。昨今のAIブームはあれど、会社によっては研究部門など一部の担当者だけかもしれません。

 そして大手SIerといっても、自社で全て開発するわけではありません。これはAIに限ったことではなく、システム開発全般に該当します。一般的に大手SIerのエンジニアは直接開発は行わず、下u……ではなく協力会社に依頼するのが通例です。大手SIerはプロジェクト管理やコンサルティングなどの上流工程を担当して、手ではなく人を動かします。

ミステリー

 一部の大手SIerエンジニアでは「プログラミングは作業者がやる事であり、われわれ管理者が行うことではない」という意見もあるらしいです。これは「適材適所」であり、あえて顧客の細かい部分に踏み込まない「奥ゆかしさ」に重点を置いた結果です。

 しかし、下u……協力会社にAIエンジニアは存在しません。AIエンジニアになれるなら、誰でも知っているIT企業(Google、ヤフーなど)や、メガベンチャー(DeNA、メルカリなど)で働いています。

 実際、これらの会社は採用活動に積極的で、人材を囲い込んでいます。仮に協力会社にAIエンジニアが在籍していても、個人的に勉強している程度でしょう。最も意欲があるエンジニアなら、協力会社から脱g……ではなく、転職するのも時間の問題です。

 そんな協力会社ですが、社員が稼働しなければ売上を確保できません。例えAIを開発できるエンジニアがいなくとも、仕事を請けてしまいます。これは苦渋の決断であり、断腸の思いなのです。

 決して社長が「ここでAIを開発したという実績を作っておけば、今後の仕事につながるだろ」と、スケベ心を出したのではありません。そんな社長は、仕事を請けてから頭の上に電球マークが浮かび、ナイスアイデアをピコーンとひらめきます。

 「別の会社に依頼しよう」と。

第4章:新たな協力会社と新たな勢力

 これは江戸時代から続く、共存共栄のため仕事を皆で分け合った「江戸しぐさ」であり、現代では「シェアリングエコノミー」と呼ばれます。自分では出来ない仕事を得意な人にやってもらい、WinーWinの関係を構築するのです。かくして、別の協力会社にAI開発の運命は託されました

 こうして大手SIer→協力会社→別の協力会社と、ドンブラコと流れていくAI開発案件ですが、川で洗濯するおばあさんが拾う前に決着をつけなければいけません。このように二転三転する開発案件は“稀によくあり”、エンジニアはいるのに営業力がない会社が仕事欲しさに飛びつきます。

 恐ろしく運が良ければ、別の協力会社が奇跡を起こしてくれるはず。ここは少年漫画的な熱い展開を期待しましょう。

 そこで問題だ! どうやってAIを開発するのか? 3択で1つだけ選びなさい

  • 答え1:逆境に立ち向かう社員が突然AIエンジニアに覚醒する
  • 答え2:さっそうとスーパーAIエンジニアが入社してくる
  • 答え3:1や2のような展開はない。現実は非情である

 少年漫画ならば1か2になりますが、残念ながらこれはIT業界のお話です。答え3という冷徹な結果を見せつけられると思いきや、ここで新たな勢力が登場します。

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