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» 2018年10月25日 08時00分 公開

マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!:「AI開発ミステリー 〜そして誰も作らなかった〜」 とある大手製造業の怖いハナシ (4/5)

[マスクド・アナライズ,ITmedia]

第5章:“自称AIベンチャー”の甘いワナ

 AIエンジニアが不足する(そもそも最初からいないような……)昨今ですが、次々とAIベンチャーが誕生しています。ベンチャーキャピタルによる出資、大学の協力、企業の独立支援など、活発な動きが見られます。

 AIベンチャーは、今回のように他のSIerにパシr……協力して開発する場合もあります。ここで選択肢に「答え4:AIベンチャーに依頼して解決」が登場して、万事解決でしょうか?

 私は自己紹介で、"自称"AIベンチャーと申し上げました。AIベンチャーを名乗るには、師匠による特訓もなければ、ライセンスに合格する必要もありません。雨後の筍のごとく増え続け、さながら戦国時代の様相を呈すなか、各社は実績作りに必死です。

 自社サイト上では「優秀なエンジニアが多数在籍」「豊富な開発実績」とあるものの、具体的な事例は掲載されておらず、その実態は外部のエンジニアに開発を依頼するクラウドソーシングという会社の存在も見逃せません。

 それでもAIベンチャーとしては今回の仕事が実績になり、別の協力会社は予算を中抜きして仕事を回せば利益が出ます。これは自分と取引先に利益があり、実績という形で社会的にも利益があるので、「近江商人と三方よし」なのです。

 こうしてAIベンチャーは、自社が持つコミュニティーを利用して、AI開発を地方在住のフリーランスエンジニアに依頼しました。まだ東京で消耗しているエンジニアより、ノマドで働くアンテナ感度の高いエンジニアの方が、AIを作れそうな雰囲気があるのでしょう。

 こうして開発元は転々と移り変わり、最終的にはフリーランスエンジニアという宇宙の彼方イスカンダル並に現場の手から離れました。

 理想のAI開発体制はこうでした。

ミステリー 理想

 しかし、現実はこうなりました。

ミステリー 現実

 システム開発は、規模が拡大すればするほど難易度が上がります。さらに今回は既存のノウハウが通じないAI導入であり、難易度はさらに跳ね上がるでしょう。今回の成功率は、ドラフト会議で貴乃花元親方が巨人に1位指名される程度の確率です。

第6章:当事者意識はどこへ消えた?

 登場人物が増え続けたAI導入ストーリーですが、きっかけは社長のきまぐれかもしれません。しかしAIブームに乗って、社長が思い付き、責任者が動き、コンサルタントに依頼し、部下へ指示し、現場に声をかけ、自分の仕事を優先し、外注が仕事を求め、協力会社は従い、新たな取引先が登場し、最後はフリーランスという一個人の手に委ねられました。

 「AIを導入する」といっても、これだけの人間と組織が動いたのです。そして、手間と時間をかけてAIを導入しても、活用できるかは別問題です。

 「船頭多くして船山に登る」という故事があります。大企業となれば関わる人数も増えますが、全員が船頭ではなく正しい意味の適材適所を図るべきでしょう。おのおのが自分のやるべきことや強みを理解すれば、話は変わってきます。

 時流に流されない社長、改革を支援する責任者、方針決定を支援するコンサルタント、現場を知る工場のIT部門、勘と経験を持つ現場、技術力で支援するSIer、それぞれの強みを生かす協力会社ならどうでしょう。トップダウンだけ、ボトムアップだけ、外注への依頼だけ、現場の対応だけ、そんな「だけ」では成立しません。失敗につながる要因は、どこかで当事者意識が薄れてしまうからです。

 もしAI導入に失敗しても、訴訟をちらつかせれば開発費は戻ってくるかもしれません。しかし、時間と信用と疲弊した人間の心は取り戻せないのです。

 今回の記事はあくまで「ぼくのかんがえたさいあくのじれい」です。しかし、AI導入に失敗し、別の会社に改めて依頼する企業は実際にいます。この負の連鎖を断ち切るには、開発元ではなく当事者の意識を変えるべきではないでしょうか。

 では、最後に今回のAI導入の顛末(てんまつ)を見てみましょう。

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