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» 2018年11月30日 14時48分 公開

個人情報を守るGoogleの「オンデバイスAI」技術とは?

Googleの「Pixel 3/Pixel 3 XL」に採用された新しいAI技術について、開発チームのリーダー、特別名誉科学者のブレイス・アグエラ・イ・アルカス氏が語った。キーワードは「オンデバイスAI」と「フェデレーションラーニング」(協調機械学習)だ。

[山本敦,ITmedia]

 10月の「Made by Google 2018」で発表され、11月には日本でも販売が始まったスマートフォン「Pixel 3/Pixel 3 XL」。そこに搭載されたAI(人工知能)技術について、GoogleでAIの技術開発を手がけるチームのリーダーを務める特別名誉科学者のブレイス・アグエラ・イ・アルカス氏が語った。キーワードは「オンデバイスAI」と「フェデレーションラーニング」(協調機械学習)だ。

「Google Pixel 3 XL」。主にカメラ機能にAI技術を採用している

 説明会の席上、アルカス氏が最も多くの時間を割いたのがPixel 3とPixel 3 XLに搭載されたオンデバイスAIの開発に関するトピックだった。“オンデバイス”とはスマホなどのデバイス上で高度なAI処理を行うことであり、従来のインターネットを介してクラウド上(オンラインのサーバ)で機械学習やデータ処理を行うAI技術と対比させた呼び方である。

米Googleの特別名誉科学者ブレイス・アグエラ・イ・アルカス氏がビデオカンファレンスでAIテクノロジーを説明した

 Pixel 3/Pixel 3 XLはともに処理性能が高く、電力消費の低いオンデバイスAIを搭載したことによって、数々のユニークなカメラ機能を実装した。例えばセルフィー(自分撮り写真)のシャッターチャンスを自動で判定し、シャッターを切ってくれる「フォトブースモード」や、激しい動きのあるシーンでベストショットを捉える「トップショット」がある。周囲に流れている音楽をマイクで拾い、タイトルやアーティスト名を検索してくれる「Now Playing」は、昨年米国などで発売した「Pixel 2」から試験的に搭載されたオンデバイスAIによって実現した機能だ。

 アルカス氏によると、オンデバイスで複雑な処理がこなせるようになると、機械学習に必要なデータを端末上でよりセキュアに管理できるという。一方で、機械学習によって端末単位でトレーニングしたデータをクラウドにマッチングさせないことには学習結果の正当性がいつまでたってもアップデートされないという弱点もある。

 そこでGoogleは、フェデレーションラーニング技術の開発に力を入れている。これはある機械学習を行う際のベースとなる「モデルA」をクラウドから端末にダウンロードし、スマートフォン上で鍛え上げてから「改善情報」だけを抽出、暗号化してクラウドに送り返すというフィードバックを繰り返し、端末内の機械学習データをブラッシュアップする技術。ユーザーの個人情報などのデータは端末から外に送り出す必要がないのでセキュリティは担保されるとしている。

ユーザーの個人情報をクラウドに送らず、「改善情報」だけをアップデートすることで機能アップを実現する「フェデレーションラーニング」技術。現在は検証中で、Gboardで試験運用を行っている

 この仕組みを使うと、例えばPixel 3のカメラアプリのあるアルゴリズムを、多くのユーザーから送られてきた改善情報を基に“平均化”し、より使い勝手の良いものにすることが可能になる。Googleは現在、Android版のソフトウェアキーボード「Gboard」の予測変換などのアルゴリズムでこのフェデレーションラーニングの試験運用を行なっている。

 アルカス氏は、このようなオンデバイスAIのアルゴリズムをスマホ以外の機器にも応用し、“スマート化”する可能性についても示唆した。例えば日本では未発売のスマートカメラ「Clip」は、室内に設置して置きっぱなしにしておくと、「記録すべき瞬間」を自動的に判断してペットや人物のベストショットをキャプチャし続ける。同様の技術を応用すれば、Google Pixel 3に搭載する「トップショット」の機能も、カメラのシャッターを切る操作自体が要らないことになる。

Googleが米国で販売しているスマートカメラ「Clip」。ベストショットをシャッター操作なしに記録できるという機能はさまざまなスマートデバイスに応用できそう

 ただし、スマホが今の形のままである限り、ポケットやバッグから取り出して、スリープ状態を解除してカメラアプリを起動するまでの所作をマニュアルで行わなければならない。日本では発売されなかったが、かつての「Google Glass」のようなメガネ型ウェアラブルデバイスが復活するチャンスかもしれない。高精度な処理をこなせるオンデバイスAI対応の半導体が今よりもさらに普及すればIoTデバイスの多様化と普及にも弾みがつきそうだ。

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