この記事は認証セキュリティ情報サイト「せぐなべ」に掲載された「架空世界 認証セキュリティセミナー 第9回『架空世界の電子マネー』」(2017年11月9日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。当時未発売だった製品やサービスの記述などは、本記事掲載時の状況に合わせて編集しています。
……それでは講義を始める。
前回はアニメ制作会社「サンライズ」のリアルロボット作品を3作品取り上げて、各ロボットの認証がどうなっているか考察した。時代を経て認証は順当に進化しているが、「コードギアス」のように超常現象には対処できないという弱点(?)もあったことは興味深い。詳しくは前回の記事を参照して欲しい。
さて、今回はちょっと趣向を変えて「電子マネー」や「仮想通貨」の登場する架空世界を紹介し、そこではどのような認証が使われているか考察していこうと思う。
さて、そもそも電子マネーとはなんだろう。
従来、通貨は紙幣や硬貨という形(現金)で取引されてきた。しかし、これだと多額を運ぶときに大変だったり、奪われる危険があったりした。そこで銀行が開設され、手形や小切手、クレジットカードといった現金を使わない決済手段が発達した。
だが、これらは主に高額決済に特化しているため、普段の生活、例えば商店でのちょっとした買い物などでは引き続き現金が用いられていた。ここで用いられる小銭の煩わしさを解決しようというのが「電子マネー」だ。
結局のところ、「電子マネー」というのは、今まで貨幣という「物品」で取引してきたところを、電子データに置き換えようということである。架空世界のうち、近未来以降を扱ったものにはよく登場する。もちろん電子データである以上、認証は欠かせない。誰かに勝手に使われるわけには行かないからだ。
では、電子マネーが登場する作品を考察していこう。最初ははてなブックマークでのコメントでも要望のあった「カウボーイビバップ」だ。
それではいつものように基本データから。1998年に初放映された、渡辺信一郎監督、音楽に菅野よう子を迎えたSFテレビアニメ作品だ。
2071年、宇宙開拓時代を迎えた人類は太陽系内に生活圏を広げている。生活圏が広がった代償として治安が悪化。その対策として、指名手配犯を捕まえる賞金稼ぎ「カウボーイ」たちが活躍している。
そのうちの1人「スパイク・スピーゲル」とその相棒「ジェット・ブラック」、そのほか謎の美女「フェイ・バレンタイン」、天才ハッカーの「エド」、犬の「アイン」たちの活躍を描く。
基本的には1話完結で、ハードボイルドタッチの作風を中心に、コメディー、サスペンス、ホラー、サイバーパンクなどさまざまな話が展開する。
さて、本題だ。2071年時点の太陽系ではどのような決済手段が用いられているのだろうか。
通貨単位はウーロンで、紙幣なども存在するが、やはり電子マネーによる決済が主流のようだ。例えば1話では位相差空間ゲート(宇宙の高速道路のようなもの)の出入り口では料金所リングのクレジットセンサーを通して料金が支払われていた。ちょうどETCといったところだろうか。
電子マネーはマネーカードというカード型のデバイスで管理されているようだ。このカード自体には特に認証がかかっているようにはみられない。つまり「所有物認証」のみである。まあ、現代の電子マネーカード、例えば「nanaco」や「WAON」もその形態で現在困っていないのだからいいのだろうか。
一方で、スパイクたちは現金を好んでいる描写も存在する。やはり裏稼業に近いカウボーイは、足のつきやすい電子マネーはあまり好みではないということだろうか。
さて、もう少し進んだ電子マネーが登場する架空世界を見ていこう。題材となるのはTwitterでも一時期話題となった小説「横浜駅SF」だ。
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