昨今のセキュリティ対策は、侵入されないようにするのではなく、侵入されることを前提とし、それをいち早く検知し取り除くアプローチが主流になっている。クラウド活用でも同様に、障害が起きることを前提とした上で、サービス停止を防ぐ可用性や、すぐにデータを復元できる体制を設けておくことが重要だ。
往々にして大規模な障害につながるのは、不幸な偶然が重なった時だ。Jip-Baseの障害のように、本来は取得しているはずのバックアップが取れていないこともある。システム部門の担当者は、障害を前提としつつ、最悪の事態を想像し、念には念を入れた対策を採ることが望ましい。
AWS、Office 365、自治体IaaSの障害が大きな問題になったため、業務部門には「うちの会社はクラウドを使っていて大丈夫か」と疑念を抱く人がいるかもしれない。そうした人も、オンプレミスとクラウドのメリット・デメリット、障害対策の考え方を頭の片隅に置いておくと、自社サービスの仕組みについて理解が深まり、納得感を持って業務を行えるようになるだろう。
また、業務部門の担当者が「クラウドは止まることがある」と認識しておくことも重要だ。その上で、自分たちが展開するサービスに求められる可用性レベルや、クラウドが止まった際に考えられる業務フローを、情シス担当者と十分に情報共有しておけば、もし障害が起きても戸惑うことはなくなりそうだ。
20年はクラウドサービスで大規模な障害が起きないことを願っている。だが、万が一発生した場合も、ユーザー企業が独自の工夫によって自社サービスの停止を防げるようになると、日本社会のデジタル化はさらに進むだろう。繰り返しになるが、クラウドは止まることがあるサービスだ。そのことをしっかりと認識した上で、クラウドを活用することをおすすめする。
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