地上450mの東京スカイツリー展望台と地上の標高差を利用して、一般相対性理論による時の流れの違いを検証することに成功した──東京大学と理化学研究所は4月7日、こんな研究結果を発表した。検証精度は、原子時計を搭載した高度1万km上空の人工衛星を用いた実験に迫る。島津製作所と共同で開発した高精度の「光格子時計」が、この検証を可能にしたという。
アインシュタインの一般相対性理論では、重力を強く受ける場所ほど時間がゆっくりと流れることが知られている。地球上では標高が低い方が重力が強くなり、標高が高い方が重力が弱まるため、標高の異なる2点に正確な時計を置けば時間の進み方の違いから標高差を測れる。
研究チームは今回、高精度に時を刻める「光格子時計」を開発。国際単位系で「秒」を定義している「セシウム原子時計」よりも100倍以上精度が高く、時刻のずれは「宇宙の年齢(約100億年)ほどたっても1秒もずれない」(東大・香取秀俊教授)ほどの精度だとしている。
東京スカイツリーの展望台に持っていけるほど小型化できたのも特徴の一つ。実験に用いた光格子時計の基幹部は最長60cmで、システム全体でも容積は500リットルほど。
今回の実験では、東京スカイツリーの展望台と地上に2台の光格子時計を設置。24時間測り、それぞれの光格子時計の振り子の振動数を比較すると、展望台に設置した時計の方が4ナノ秒早く進んでいた。このデータを一般相対性理論から導ける理論値と照らし合わせたところ、高度約1万km上空の人工衛星を使った一般相対性理論の検証実験に迫る精度で検証できたとしている。
香取教授は「現在の有効数字18桁の精度なら1cmの精度で高さを測れる。今は19桁の精度を目指しており、数年後にはミリメートルの高低差が測れるようになると思う」と話す。
時計同士の距離は関係なく標高差(重力差)を測定できるため、遠く離れた位置に置くことでプレート活動や火山活動などの地殻変動の監視や、重力場計測システムなどに活用できるとしている。
【修正履歴:2020年4月15日午後7時 追加の取材に基づき、一部表現を変更しました】
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