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» 2020年04月03日 20時24分 公開

査読8年、京大教授の「ABC予想」証明理論 ついに論文誌掲載へ

京都大学数理解析研究所の望月新一教授が2012年に提唱した、数学の未解決問題「ABC予想」を証明する論文が、8年間の査読期間を経て同所が編集する論文誌「PRIMS」に掲載されると京都大学が発表した。

[井上輝一,ITmedia]

 京都大学数理解析研究所の望月新一教授が2012年に提唱した、数学の未解決問題「ABC予想」を証明する論文が、8年間の査読期間を経て同所が編集する論文誌「PRIMS」に掲載されると京都大学が4月3日に発表した。

 ABC予想は自然数の足し算と掛け算に関する予想で、この予想を仮定すると数論に関する多くの予想や定理を導けることから、数論における重要な未解決問題として知られる。予想自体は1980年代に提唱されたが、これまで有効な証明はなかった。

ABC予想が示す命題

 これに対し、望月教授は「宇宙際タイヒミューラー理論」(Inter-Universal Teichmuller, IUT理論)を、12年に4編600ページにわたる論文としてWeb上に公開。IUT理論が正しければ、その帰結としてABC予想を証明できるという。

 「宇宙際タイヒミューラー」の「宇宙際」は、数学上の概念としての「宇宙」間の関係を論じていることを示す言葉。「タイヒミューラー」は、IUT論文の考え方などが20世紀前半のドイツの数学者オズヴァルト・タイヒミューラーの理論と似ていることから名付けられたという。

 IUT理論を記した望月教授の論文(IUT論文)は、計600ページと長く、かつ難解であることから、他の研究者による査読期間は8年間と長期間にわたった。

 IUT論文が掲載される論文誌の編集は京都大学数理解析研究所が行っており、望月教授は同誌の編集委員長だが、論文審査に当たっては望月教授を完全に除外した特別編集委員会を編成したとしている。

 望月教授は、「IUT論文のポイントは、『足し算』を『掛け算』から再構成(復元)すること」としており、「復元の操作はコンピュータのソフトウェアのようなもの。プログラムを順に追って解読するための忍耐が要求されるという点が、IUT論文が難解といわれ、しばしば『読みにくい』と評される一因になっていると思われる」とコメントしている。

 望月教授と交流があり、IUT理論を一般向けに紹介する書籍を執筆した東京工業大学の加藤文元教授は、書籍に関するインタビューの中で「論文誌へのアクセプト(掲載許可)が理論の正しさを示しているわけではないが、エキスパートが査読したというのは一つのお墨付きにはなる」と話す。

 加藤教授は今回の論文掲載の意義について、「世界中の若い人が、IUT理論に自分の研究者人生を賭けてみようと思って参入してくると期待されること。さらに多くの人がこの分野に来ることで、理論も磨かれ熟成していくだろう」とコメントした。

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