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» 2019年08月02日 07時00分 公開

コンピュータで“錯視”の謎に迫る:目の錯覚、誰がどうやって見つける? 学術研究で理論的に発見された錯視 (1/3)

早稲田大学・新井仁之教授が解説する錯視の世界。第13回は学術的推論によって見つけられた錯視を紹介。錯視の学術的研究の面白さの一端をお伝えします。

[新井仁之,ITmedia]

連載:コンピュータで“錯視”の謎に迫る

あなたが今見ているものは、脳がだまされて見えているだけかも……。この連載では、数学やコンピュータの技術を使って目に錯覚を起こしたり、錯覚を取り除いたり──。テクノロジーでひもとく不思議な「錯視」の世界をご紹介します。


 前回は、偶然見つけられた古典的な錯視をいくつか紹介しました。今回は学術的な推論によって見つけた錯視についてお話します。

双曲型錯視(ハイパボリック・イリュージョン)の発見

 まずは次の錯視画像を見てください。これは筆者らが発見した錯視で「フレーザーのねじれ紐(ひも)を使った双曲型錯視」、または略して「ねじれ紐の双曲型錯視」と呼んでいます。

photo 図1 ねじれ紐の双曲型錯視(新井仁之・新井しのぶ、2010)

 「これのどこが錯視なの?」──そう思う方もいるでしょう。このタイプの錯視が今回の主役となりますので、はじめにどのような錯視なのかを紹介しましょう。

 上の図には黄色と黒の紙縒り(こより)のような、ひも状の細長い帯を曲げたものがいくつも並んでいます。

photo 図2 黄色と黒の紙縒り(こより)のような、ひも状の細長い帯

 この帯は「フレーザーのねじれ紐」(あるいは単にねじれ紐)と呼ばれています。このねじれ紐を、数学でよく知られた直角双曲線座標(図3のA)の赤い曲線に沿って何本も配置したものが「ねじれ紐の双曲型錯視」です。

photo 図3 直角双曲線座標(A)とねじれ紐の双曲型錯視(B)

 ねじれ紐の双曲型錯視(図3のB)と直角双曲線座標(図3のA)を比べてください。ねじれ紐の双曲型錯視(図3のB)は、ねじれ紐の本来の配置(図3のA)に比べて反時計回りにずれて見えると思います(補注1参照)。

photo 反時計回りにずれて見える

【補注1】 いくつか錯視を紹介しますが、錯視の見え方には個人差があり、人によっては特定の錯視が見えないということもあります。

 よりはっきりとこの錯視を確認するため、下の図を用意しました。

photo 図4 矢印の先へ進む

 図の真ん中に白い矢印で道を指してありますが、その道を目で見ていくと、画像の右上の頂点から左側にずれたところに到着するように感じると思います。しかし、指で実際に道をなぞっていくと、右上の頂点に到達することが確認できます。最も、筆者にはそれも簡単ではなく、途中で若干混乱するのですが。

 今回はこの双曲型錯視を作った経緯、そしてさまざまな形状がある中で、なぜ直角双曲線座標を選んだのかをお話したいと思います。たまたま直角双曲線座標を使ってみたというわけではありません。

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