古い社宅に最新の節電・蓄電・発電設備を導入、スマートなマンションの効果を検証スマートホーム

「ENEOS」ブランドの石油元売り大手、JX日鉱日石エネルギーが横浜市で、社宅を使ってスマートマンションの実証実験を開始した。燃料電池と太陽光発電、大型蓄電池や高圧受電設備も導入して、自立型のエネルギーシステムの有効性を検証する。

» 2012年05月21日 15時48分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 建築から約40年を経過したJX日鉱日石エネルギーの社宅「汐見台アパート」(横浜市磯子区)には16世帯が住んでいる。この古い社宅に最新の節電・蓄電・発電設備を導入して、停電時にも強いスマートなマンションへ改築する取り組みが始まった。

 汐見台アパートに導入するのは、燃料電池を使って電力と熱の両方を作ることができる「エネファーム」6台のほか、屋上には太陽光パネル、さらに敷地内には大型蓄電池やEV(電気自動車)用の充電器も設置する(図1)。電力会社からは電気料金の安い「高圧」を一括で受けられるように、高圧受電設備を経由して共用部と各家庭に電気を供給できるようにする。

ALT 図1 社宅に導入する自立・分散型エネルギーシステム。出典:JX日鉱日石エネルギー

 各種の発電・蓄電機器を生かしながら、地域単位、マンション単位、家庭単位で電力と熱を有効に活用するため、CEMS(地域向けエネルギー管理システム)、MEMS(マンション向けエネルギー管理システム)、HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)の3種類を構築する。最大の特徴はSOFC(固体酸化物型燃料電池)を中核にして電力と熱を1日のうちで最適に配分できる点である(図2)。

ALT 図2 1日の電力と熱の活用イメージ。出典:JX日鉱日石エネルギー

 汐見台アパートに導入したSOFC型のエネファームは1台で0.7kWの発電能力があり、6台で4.2kWの電力を供給できる。一般の家庭は平均で500Wの電力を使うのが標準的で、16世帯では8kWになるため、ほぼ半分の電力をエネファームでカバーできる。足りない分を太陽光発電で補うことができれば、電力会社から電気を買わずに済む。

 太陽光発電によって昼間に余った電力があれば、蓄電システムに貯めておいて夜間に使うことが可能だ。エネファームが作る熱についても同様で、昼間に余った熱があれば「ヒートポンプ式給湯機」を使って熱湯に変換して夜間に給湯することができる。各家庭の電力と熱の利用状況や気象条件に合わせて、エネルギーを最適に配分しながら、電力会社からの供給量を最小限に抑える仕組みである。

 JX日鉱日石エネルギーは汐見台アパートの実証実験を2015年3月末まで続ける予定だ。同社は石油に続くエネルギー事業として、SOFC型エネファームや太陽光発電システムの販売、さらには電力小売事業も手掛けており、実証実験の成果を今後の事業拡大に生かしていく。

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