電気料金の引き下げに効果、マンションの「高圧一括受電」が前年比36%の伸び電力供給サービス

マンションの電力契約を個別の家庭単位ではなくマンション全体でとりまとめる「高圧一括受電」が増えている。市場調査会社の富士経済によると、2011年末で前年比36%の15万戸に導入され、2020年末には8倍の127万戸に広がる見通しだ。

» 2012年05月14日 17時05分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力による電気料金の値上げが大きな話題になっているが、すでに全国各地のマンションで電気料金を引き下げるための取り組みが進んでいる。従来のように個別の家庭ごとに電力会社と契約する方法を改め、マンション全体でまとめて契約することによって、単価の安い電力を使えるようにするものだ。「高圧一括受電」という方式で、このほど調査会社の富士経済が2011年の導入状況と2020年の予測を発表した。

 調査結果によると、高圧一括受電方式の契約を結んだマンションは戸数ベースで2010年末の11万戸から2011年末に15万戸に増えた。年間の伸び率にして36%である。さらに2020年末には127万戸に増加すると予測しており、2011年末と比べて8倍以上の規模になる。毎年平均して12万戸以上が切り替わる見通しである。

 高圧一括受電が増加する背景として、主に2つの要因を挙げることができる。第1に電気料金を引き下げるためだ。家庭向けの電力契約は「低圧電灯」と呼ばれるもので、1kWhあたりの単価は20円前後である。これに対して企業向けの「高圧」は通常15円以下と安く設定されている。基本料金はどちらも月額1500円程度と変わらない。マンション全体で合計して同じ量の電力を使う場合、高圧のほうが2割以上安くなる。

 さらに今後はマンションにおいても、太陽光発電や蓄電システムと組み合わせて電力を有効に活用するシステムの導入が重要になってくる(図1)。災害時や停電時でも独自に電力を供給できるようにするためで、電力会社との契約も一本化されていることが望ましい。これが第2の要因だ。同様に今後の普及が期待されるEV(電気自動車)に対しても、マンション内に充電設備があれば便利になる。

ALT 図1 今後の増加が予想されるマンション向けのエネルギー管理システム。出典:三井不動産レジデンシャル

 これから施工される新築マンションで規模の大きいものについては、高圧一括受電方式が主流になるとみられる。ただし高圧電力を受けるための設備や管理責任者が必要になるため、専門会社に委託するのが一般的だ。あらかじめ電気料金の削減率を決めたうえで、高圧一括受電方式による電力をマンション向けに供給するサービスも出始めている。

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