自家発電を増やして電気料金を削減、「ネガワット」の取り組みが始まる電力供給サービス

関西電力が今夏の電力不足を回避するために、企業の余剰電力を買い取る「ネガワットプラン」を7月から実施する。その計画に呼応する形で、大阪ガスと関連会社のエネットが顧客企業を対象にネガワットの本格的な試行サービスを開始した。

» 2012年06月04日 09時33分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 夏の電力不足を解消する対策が各方面で進む中、「ネガワット」と呼ぶ新たな電力売買の仕組みが始まろうとしている。「ネガワット」は電力の利用者が節電や発電によって生み出した余剰分(マイナスの意味で「ネガ」)を、電力会社が入札によって買い取る制度である。

 電力の需要が供給量を超えそうな事態が想定されたときに、電力会社が利用者に対して「ネガワット」を募集する。利用者は節電できる電力量と希望単価を電力会社に提示して、条件が合えば買い取ってもらうことができる。

 このような新しい制度に向けて、大阪ガスと関連会社のエネットが顧客企業向けに「ネガワット」の試行サービスを6月1日から開始した。対象は大阪ガスのガスコージェネレーションシステムを利用している企業で、大阪ガスから電力抑制の依頼を受けて応募する仕組みだ(図1)。こうした電力抑制に応じて利用者側が協力することを「デマンドレスポンス」と呼び、デマンドレスポンスによってネガワットを作り出す。

ALT 図1 顧客企業から「ネガワット」を集める仕組み。出典:大阪ガス、エネット

 エネットは企業向けに電力を販売する「特定規模電気事業者」の最大手で、自家発電などによる電力を顧客に供給している。気象条件などによって顧客側の電力使用量が増加すると、電力会社と同じように供給量を増やす必要がある。そのためにネガワットの制度を導入する。

 エネットが大阪ガスを通じてデマンドレスポンスの依頼を顧客企業に伝えると、顧客側ではガスコージェネレーションによる自家発電量を増やして、エネットからの電力供給量を減らす(図2)。これによってネガワットを生み出すことで、電力を必要としているほかの顧客企業に融通することができる。

ALT 図2 「デマンドレスポンス」によって電力供給量の削減分(ネガワット)を創出。出典:大阪ガス、エネット

 かりにネガワットを集めることができなければ、エネットは不足分の電力を追加のコストをかけて調達しなければならない。ネガワットによって追加コストを回避できるため、そのコスト相当分を顧客企業と大阪ガスとエネットの三者でシェアするスキームである。

 エネットには大阪ガスのほかに東京ガスとNTTファシリティーズが出資している。ネガワットに関しては、政府と東京電力が募集した「ピークカットアイデアコンテスト」にNTTファシリティーズとエネットが共同で提案し、3月に採択された実績がある。これをもとに東京電力もネガワットプランの提供を検討中だ。ほかの電力会社も追随する見込みで、今後は全国各地でネガワットの仕組みが拡大していくとみられる。

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