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» 2012年06月11日 05時30分 UPDATE

蓄電・発電機器:太陽光発電普及を推し進める神奈川県、全量買取も見据えて新事業案を募集

神奈川県は太陽光発電システム普及事業「かながわソーラーバンクシステム」を主導し、県民に低廉な価格で太陽光発電システムを提供している。太陽光発電システムの価格低下や、固定価格買取制度開始を受け、新たな事業案の募集を始めた。

[笹田仁,スマートジャパン]

 神奈川県は「かながわスマートエネルギー構想」を掲げ、自然エネルギーの普及や省エネの推進、蓄電池や電気自動車を利用したピークシフトの促進に力を入れている。2020年度には県内で消費する電力量のうち20%を、この3つの取り組みの成果でまかなうことを目標としている。

 3つの取組みの中でも、自然エネルギーの普及、特に太陽光発電システムの普及はこの構想の柱と位置付けられており、県内の200万戸に太陽光発電システムを導入するという目標を早期に実現するためにさまざまな策を打っている。中心となるのが太陽光発電システム普及事業「かながわソーラーバンクシステム」だ。

事業者には売りやすい環境を、県民には安価に買える場を

 かながわソーラーバンクシステムの事業は2011年12月から始まった。神奈川県民がなるべく安く太陽光発電システムを導入できる環境を作ることを目指したものだ。この事業では、住宅用太陽光発電システムをなるべく安価に、かつ確実に提供できる業者を募り、集まった申し込みを県が審査し、複数の指定事業者を選ぶ。県民向けには、太陽光発電システムの購入希望を受け付ける窓口を作る(図1)。

Solar Bank 図1 かながわソーラーバンクシステムの事業の流れ

 太陽光発電システム購入を希望してこの窓口に集まる申込者は、事業者から見るとまとまった数の見込み客。かなりの確率で自社のシステムを販売できると計算できる。また、販売量も相当な数になると予想できる。大量に販売できると見込めれば、大幅な値引きにも踏み切れる。県民からすると、「なるべく安価に、かつ確実に提供できる」という基準で認定を受けた事業者から太陽光発電システムを安価で購入できる。システムを多く売りたい事業者と、システムを安く買いたい県民の両方が得をする仕組みだ。

価格下落により、さらに安価に販売する事業者を募る

 現在のところ、かながわソーラーバンクシステムに参加する事業者は、10年間の売電収入と電気料金の節約で機器の購入と設置にかかる費用を「可能な限り回収できる」ということを想定して太陽光発電システムを販売している。

 しかし、県はこの点を見直すことを決めた。10年間の売電収入と電気料金の節約で機器の購入と設置にかかる費用を「回収できる」と見込める案を新たに募集する。つまり長い目で見たときに、太陽光発電システム導入にかかる負担がゼロとなる案ということだ。背景には、太陽光パネルの急激な価格下落がある。

 具体的な価格指定もある。戸建住宅なら1kW当たり43万円以下、共同住宅なら1kW当たり44万円以下で事業者がシステムを提供する案を募集する。

まったく新しいアイデアも募集

 さらに、まったく新しい形の事業案も募集する。神奈川県は、例として発電事業者が複数の住宅の屋根を借りて太陽光発電システムを事業者の負担で設置し、発電全量を売電する事業の案を挙げているが、この例にとらわれず、県民の利益となるあらゆる事業案を募集する。ただし、事業の具体的な流れ、資金調達計画、事業収支見込みなどの現実的な案を提示する必要がある。

 さらに全量買取に向けた太陽光発電システム導入案も募集する。設置対象は工場、商業施設、オフィスビルなど。設置する施設の規模に応じて中規模(18〜22kW)と大規模(65〜75kW)に分けて募集する。全量買取の場合は機器の費用と工事費用の回収がほぼ確実に見込めるため、価格指定は設けない。申し込みの中から、採算性の高さを特に重視して選考するとしている。

発電事業者向けに県有施設の屋根を貸し出す

 発電事業者に向けた事業支援策も発表した。神奈川県が保有する建物の屋根を貸し出すというものだ。屋根の面積が1000m2以上で、十分な耐震性を有し、屋根の構造が太陽光パネル設置に適するとみられる施設を貸し出す。2012年6月時点で、該当する建物は20施設、25棟で、屋根面積合計は3万2286m2になる。

 貸出期間は20年。その間に県が施設を市町村や企業に売却することになっても、屋根の貸し出し契約を継続させることを条件とするとしている。貸出料は年額で1m2当たり100円を最低額と設定している。県は、より高い貸出料を払いながらも事業が成り立つ事業者に貸し出す。

 発電事業者は県が提示した施設の中から事業に適している施設を選び、太陽光発電システムの仕様や設置工事の工法、工期、売電相手の電力会社、屋根の賃借料などの事業計画を提出する必要がある。

 いよいよ7月から固定価格買取制度が始まる。太陽光を利用して発電した電力の買い取り価格は42円と決まった。神奈川県の施策がどのような結果をもたらすのか、しっかり見守りたい。

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