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» 2012年10月09日 11時00分 UPDATE

電力供給サービス:[検証]関西電力の今夏の需給対策、データが示す来年の進路は

今夏の電力需給で最大の話題になったのは関西だ。当初は大幅な電力不足が予想され、政府は15%以上の節電目標を設定した。その後に原子力発電が再稼働して、需給率は常時90%以下に収まった。関西電力の公表データをもとに、今夏の需給状況を検証し、来年の方向性を探ってみる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 関西の7つの府県で構成する「関西広域連合」に宛てて、今夏の電力需給状況に関する報告書が関西電力から9月末に提出された。実績データを使って需要と供給の状況を説明し、最後のまとめでこう強調している。

 「大飯(発電所の原子力)の再稼働などにより追加の供給力を確保いたしましたことから、期間を通して安定した需給状況を維持することができ、今夏を乗り切ることができました」。

 実際に7月〜9月の3か月間を通して、関西電力の管内で需給率が90%を超えることは1度もなかった。全国でも関西と四国だけである。その結果から、「原子力発電を再稼働させる必要はなかったのではないか」との声が出始めている。

 関西電力による実績データを見る限り、どちらとも言いがたい微妙な状況だった。需要と供給の両面から詳しく見てみよう。

節電対策の効果を過小に評価していた

 まず需要から検証すると、最大電力が発生したのは8月3日(金)の14時台で、2682万kWだった。これは5月時点で想定した最大電力2987万kWを300万kW以上も下回っている(図1)。1割以上も開きがあることから、そもそも需要の見通しが過大だったと考えるのが妥当だろう。

kanden1.jpg 図1 関西電力の管内で今夏の最大需要電力を記録した8月3日(金)の需給状況と5月時点の想定。出典:関西電力

 当初の見通しは猛暑だった2010年の実績をもとに、企業や家庭における節電効果などをふまえて算出したものである。実際の最高気温は2010年と同水準の36度強で、気象条件にさほどの違いはなく、それでも最大電力は2010年の3095万kWから400万kW以上も少なくなっている。夏を通した平均値でも300万kWを削減できている(図2)。

 これは企業や家庭の節電効果が想定を大きく上回ったことによるものだ。関西電力が企業や家庭において「定着した節電」として見込んでいたのは102万kWで、最大需要のわずか3%である。企業や家庭の節電対策を過小に評価していた。

kanden4.jpg 図2 関西電力管内における夏の期間の最大需要電力(2010年〜2012年)。出典:関西電力

 ただし関西電力が企業や家庭の節電対策を積極的に促進したことも、需要の大幅な減少をもたらした1つの要因になっている。節電に協力した企業や家庭に対して電気料金を値引くなどのプログラムを展開した。

 例えば企業や事業所が営業日などを変更する「計画調整特約」には3600件以上の参加を集めて、合計で193万kWのピークカットを実現している(図3)。前年は1700件程度の参加で100万kWのピークカットだったことから、件数と需要ともに倍増した。来年はBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)などの導入拡大によって、さらに参加企業の増加が期待できる。

kanden2.jpg 図3 関西電力が企業と結んだ調整契約の種類と実績(9月7日時点)。出典:関西電力

 おそらく来年以降の最大需要電力が今年を上回ることはないとみてよい。最高気温が37度を上回るような猛暑の夏が来たとしても、企業や家庭の節電対策が進んでカバーできる可能性が大きい。関西広域連合では今夏に“無理した節電”がなかったかを検証する必要があると指摘しているが、その可能性は低いと考えられる。

 というのも、7月初めに原子力発電が再稼働したことで、電力不足に対する危機感は弱まっていた。今夏は東京電力の管内でも無理のない節電が実施されたと想定できるが、最大需要電力は震災前の2010年と比べて15%も減っている。それと比べると関西電力の管内は13%の減少で、東京よりも節電率は小さいことから、同様に無理のない節電によって需要が引き下げられたと推定できる。

 今年の最大需要電力2682万kWをベースに、来年以降は2700万kWが上限と考えてよいだろう。

火力発電の増強でも供給力は十分だった

 では一方の供給力はどうたったのか。最大需要電力が発生した8月3日の供給力は2992万kWあった(図4)。これは5月に想定した最大供給力2542万kWを450万kWも上回っている。その約半分に相当する237万kWが原子力で、大飯発電所の3号機と4号機を再稼働させたことによって生み出されている。

 関西電力の試算では、大飯発電所の2基を再稼働させなかった場合の供給力は2746万kWになっていた。原子力による電力がなくなると、揚水発電の電力も減ってしまう。その分をカバーするために運転停止中の火力発電を復活させても、8月3日の最大需要に対して予備の電力は2.4%しか確保できなかった。

kanden3.jpg 図4 8月3日の供給力と原子力発電がなかった場合の想定。出典:関西電力

 予備率が3%を切ると計画停電を実施しなければならず、「大変厳しい需給状況であった」と関西電力は予測している。原子力発電の再稼働が必要だったことの根拠である。

 ただし1基ではなくて2基を稼働させる必要があったかは疑問が残る。1基を稼働させれば118万kWを追加できたわけで、予備率は6.8%まで高まる。今夏の東京電力や東北電力は一時的に需給率が95%を超えて、予備率が5%以下に落ちており、その事態よりは危険性が低い。

 さらに火力発電の追加分も東京電力と比べると少なかった。東京電力は新設の火力発電設備を合計で163万kWも増強している。需要が東京の約半分である関西でも80万kW程度の増強は可能だったと考えられる。しかし実際に新設したのは12万kWに過ぎない。かりに80万kWの火力発電設備を新設していれば、予備率は4.9%になる。

 来年の夏以降も、原子力なしで火力発電を増強することによって、予備率を最低5%のレベルに維持することは可能だろう。今年の実績データをもとに、来夏の電力供給体制は安全性を重視するのか、あるいはCO2排出量や発電コストを重視するのか、政府や自治体をまじえて適切な判断が求められる。

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