西日本では計画停電も想定された今年の夏だが、結局は問題なく乗り切ることができた。実際に各地域の電力需要の結果を見ると、関西と四国では政府の予測から10%以上も下回っている。節電の効果が発揮されたとはいえ、需要の見込みが過大だったことは否定できない。
政府が主宰する「エネルギー・環境会議」が今夏の電力の需給見通しを発表したのは5月14日のことだった。中でも関西電力の管内では2010年の夏と比べて20%程度の需要を減らさないと、2011年に計画停電を実施した東京電力の場合よりも厳しい状況になるおそれがあると警告を発した。
4日後の5月18日には、関西で15%、東日本を除く各地域でも5〜10%の節電目標が設定され、さらに6月下旬には関西・四国・九州・北海道の4地域で計画停電の実施概要が発表された。その後に関西電力は2基の原子力発電所を稼働させて供給力を増強したため、節電目標は10%に引き下げられている。
実際に大きな問題もなく暑い夏が過ぎようとしている今、果たして当初の電力需要の予測は正しかったのか、との疑問がわいてくる。そこで9月21日までの実績と、5月14日時点の予測を、電力会社ごとに比較してみた(図1)。
このように9つの電力会社すべてにおいて、最大需要電力の実績が予測を下回っている。安全のために需要を大きめに想定しておくことは必要だが、あまりにも差の大きい地域がいくつかある。
最も大きな差が出たのは関西で、実績と予測で12.5%も違っている。次に大きいのは四国の11.2%だ。東京でも8.7%、実に442万kWもの差が生じている。西日本の各地域では節電目標が設定されたことにより、企業と家庭の節電対策が予想以上に進んだ効果もあるが、それでも1割以上の開きは大きすぎる。そもそも当初の需要の見込みが過大だった可能性がある。
というのも、関西の最大需要電力の予測は3015万kWになっているが、これは猛暑だった2010年の3095万kWから2.5%少ないだけである。気温が低めだった2011年の2784万kWからは8.3%も増やしている。しかし実際の最大需要電力は2681万kWにとどまり、2011年よりも少なくなった。
来年の夏のためにも、政府と電力会社には正しい分析と今後の対策を早めにまとめて発表してもらいたいところである。太陽光発電などが拡大する来年の夏は今年以上に節電効果が大きくなることは確実で、よほどの猛暑にならない限り、最大需要電力はさらに低下する。それに見合った効率的な供給体制の確保が各電力会社に望まれる。
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